| 研究課題/領域番号 |
25780538
|
|---|
| 研究種目 |
若手研究(B)
|
| 研究機関 | 岩手大学 |
|---|
研究代表者 |
滝吉 美知香 岩手大学, 教育学部, 准教授 (00581357)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
| キーワード | 自閉症スペクトラム / 自己理解 |
|---|
| 研究概要 |
本研究は，自閉症スペクトラム障害（ASD）者の自己理解に関する発達的研究を基盤としながら，自己についての問題が顕在化する青年期以降のASD者に主に着目し，自己理解を軸とした支援として，高等教育機関におけるASD学生支援，就労およびその継続に関するASD者支援へとつなげようとするものである。
初年度である当該年度は，これまで構築してきた独自の自己理解分析モデルの改訂と予備調査を実施することが主な計画であった。ASD者の自己理解研究に関する先行研究の見直しを行い，ASD者の幼年期から現在に至るまでの自己理解の様相を学校在籍との関連から時間軸でとらえる着想に至った。ASD者数名の予備調査を実施し，研究方法について検討を行った。現在，高校生から社会人のASD者を対象にして，本調査として個別インタビューによるデータ収集を継続中である。現時点で45名のASD者の協力を得ることができた。研究協力を得た学校や保護者に対し，途中経過のフィードバックを行うことを通して，今後の分析や考察に関する貴重な示唆を得ることができている。
また，高等教育機関におけるASD学生支援については，主に周囲の学生がASD学生支援に対してどのような意識を抱いているかという点に着目することが，高等教育機関でASD学生支援を発展させるキーになると考えた。そこで，大学生約350名を対象にアンケート調査を実施した。現在結果を分析中であるが，途中経過について，2014年3月に京都大学にて行われた日本発達心理学会第25回大会におけるラウンドテーブルにて話題提供を行った。学会でのディスカッションをとおして，今後の分析につながる有意義な観点を得ることができた。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は，これまで構築してきた独自の自己理解分析モデルの改訂と予備調査を実施することが主な計画であった。実際に，ASD者の自己理解研究に関する先行研究の見直しをふまえて，研究方法について検討を行ったうえで，予備調査を実施することができた点は，計画通りの遂行といえる。さらに，当該年度中に本調査の実施へと進み，現在までにすでに45名のデータを収集している点は，更なる計画の進展として評価できる。
また，高等教育機関におけるASD学生支援について，大学生約350名を対象にしたアンケート調査を実施した点も，研究計画にそった実施である。
一方で，就労およびその継続に関するASD者支援については発達障害者支援センターとの関係構築という点にとどまり，聞き取り調査を十分には行うことができなかった。
以上のことから，当該年度の研究目的達成度については，総合的に「おおむね順調に進展している」と判断する。
|
| 今後の研究の推進方策 |
ASD者の自己理解に関する発達的研究については，今後も引き続きデータの収集と分析を続けていく。ただし，当初計画していた典型発達群との比較については，その必要性の有無を再考する必要があると考えている。
高等教育機関におけるASD学生支援に関しては，今後も計画通り進めていく予定である。具体的には，結果の分析をすすめたうえで，学会発表（日本特殊教育学会第52回大会におけるポスター発表を予定）を行い，得られた意見や質問等を反映させた考察を行っていく予定である。
就労およびその継続に関するASD者支援に関しては，当初は企業や作業所を対象にした調査を考えていたが，ASD者が抱える困難の個別性また職場の地域性の大きさなどから，より個別の事例に着目した実践事例等を積み重ねていくことに重点を置いた研究の展開にしたいと考えている。
|
