本研究は自閉スペクトラム症の児童について、その心理特性を段階的に明らかにすること、その知見を踏まえて支援方法を検討することを目的としました。2019年度は本研究の最終年度であったため研究成果をまとめました。 以下の結果について、それぞれまとめました。 ①自閉スペクトラム症の子どもたちは社会的コミュニケーションに困難を抱えていますが、その中でも言語の使い方に特徴があると報告されています。本研究では会話スキルに着目して、会話スキルのトレーニングの効果について検証した結果を論文にまとめました。自閉スペクトラム症の児童1名を対象として会話スキルトレーニングを行い、その介入の効果について、会話分析と共感性尺度を用いて検討しました。その結果、介入前後でこれらの指標の変化が認められ、介入の効果が示されました(本論文は現在、査読中です)。 ②自閉スペクトラム症の児童生徒は通常学級に在籍することが多く(文部科学省の調査においても、神経発達症が疑われる児童生徒の在籍率は約6%と報告されています)、自閉スペクトラム症をはじめとする児童生徒の支援の在り方は通常学級の担任教師の課題となっています。そこで、小学校の通常学級の担任(および担任を経験したことがある方)を対象としてアンケートを依頼し、通常学級における支援に関する信念や支援の実態について調査を行いました。神経発達症が疑われる児童に対して、どのような支援を実施しやすいと考えるのか、どのような支援を行っているのかについて尋ねました。その結果、学級で行いやすい支援は学級全体に対する支援であり、個別の支援については実施が難しいという結果となりました。この結果は、2007年の先行研究と同様の結果となりました。通常学級での支援の在り方について分析を進め、担任にとっても子供にとっても有効な支援とはどのようなものかを検討していきます(結果について論文執筆中です)。
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