研究課題/領域番号 |
25780543
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
浅野 みずき 福井大学, 子どものこころの発達研究センター, 特命助教 (40647773)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 注意欠如多動性障害 (ADHD) / 自閉症スペクトラム障害 (ASD) / 近赤外線スペクトロスコピィ (NIRS) / CANTAB / メチルフェニデート |
研究概要 |
注意欠如多動性障害 (ADHD) および自閉症スペクトラム障害 (ASD) は中核症状が異なるが、併存率は10~20%にのぼる (Spencer, 2000) 。早期介入のためにも両障害の鑑別は極めて重要である。本研究はADHDおよびASDの鑑別に貢献するために、実行機能障害仮説に基づき、詳細な実行機能評価が可能なバッテリーであるCANTAB施行中の脳活動を近赤外線分光法 (NIRS) で測定し、ADHDおよびASDの違いを検討した。本研究の結果は国内および国際学会等で報告した。以下、その詳細である。 CANTAB課題の視空間性ワーキングメモリを測定するSWM 課題において、定型発達(TD)群と比較してADHD群の得点が有意に低下していた 。一方、NIRSで測定した脳活動変化については、視空間性短期記憶課題において、TD群に比べ、ASD群において、7,8ch(前頭極部位に相当)で有意な脳活動の低下を示した。本研究の結果から、ADHDにおける視空間性ワーキングメモリの弱さが認められ、先行研究と符合する結果が得られた。ADHDとASDでは直接の有意差は検出されなかったが、ADHDではASDに比べて視空間性ワーキングメモリ障害が重い可能性が示唆された。一方、NIRS波形では、ASD群においてTD群とADHD群とは異なる脳活動パターンが存在することが示唆された。 加えてわれわれは、ADHD児を対象に、中核症状と密接に関与する視空間性ワーキングメモリの観点からメチルフェニデート (MPH)の治療効果をCANTABとNIRSを用いて検証した。未服薬日と服薬日を比較した結果、課題成績では治療効果を認めなかった。一方、脳活動では、課題難易度に応じた脳活動変化を認めた。視空間性ワーキングメモリ課題施行中のNIRS検査が、簡易なMPH効果判定になることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究はCANTABとNIRSを用いることにより、①ADHDとASDにおける前頭葉機能評価に関する研究、②ADHDにおけるMPH治療効果の検討、の2つの研究を完了しており、当初の計画以上に進展しており、国内学会、および国際学会にて報告された。2つの研究は現在、国際誌に学術論文として投稿中である。 今後はADHDとASDにおける発達的変遷を明らかにすることを目的とした縦断的検討、および客観的なMPH効果判定の確立を目指し、より低年齢のADHDを対象とし、CANTABとNIRSを用いたMPHの治療効果の検証を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、CANTABとNIRSを用いることにより、①ADHDとASDにおける前頭葉機能評価に関する研究、②ADHDにおけるMPH治療効果の検討、の2つの研究を実施した。 今後は、両障害における長期予後の観点から発達的変遷について検討を行う。ADHDとASDの両障害の臨床症状は年齢や経過とともに変化することが指摘されており、発達的経過に応じた治療や教育的介入のためにも両障害の発達的変遷を明らかにすることは重要である。 また、客観的なMPH効果判定の確立を目指し、10歳以下のより低年齢のADHD児を対象に、MPH治療効果の検討を行う。薬物治療の効果については、家庭や学校など複数の場面を対象とした行動観察で見極める方法が一般的であるが、これらの情報は観察者の主観性が影響し、バイアスが存在することが指摘されている。そのため、薬剤反応性および反応性の評価を的確に行うには、行動上の評価だけでなく、客観的な指標による効果判定の確立は重要な課題である。本研究はCANTABとNIRSを用いた、客観的な治療効果判定の確立に貢献することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の見通しより早く研究が進んでおり、研究費の前倒し使用が必要となった。 使用時期が前倒しになっただけで、およそ当初の計画通りに使用している。
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