研究課題/領域番号 |
25780545
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
木村 素子 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (60452918)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 通学制聾学校 / 聴覚障害児教育 / アメリカ / 特別支援教育 |
研究実績の概要 |
本研究は20世紀初頭アメリカの通学制聾学校において障害のない子どもと同様の教育目標・内容・方法による通常教育に準じた教育の聾児への提供とその質の保障がどのように行われていたのかを、口話教授方法の改善、学業不振児の判定・対処方法、教育課程改良、教員養成体制との関連から明らかにすることを目的としている。 本年度は、シカゴ通学制聾学校を対象に、その教員の特性や活動状況について明らかにするために、イリノイ州立聾唖院発行の週刊新聞である"The Deaf-Mute Advanc","The New Era"を中心に読解・分析を行った。その結果、20世紀転換期にシカゴ校で在職していた聾者教員の特性や経歴、シカゴ聾者コミュニティにおける活動状況やコミュニティにおける評価について明らかになってきた。具体的には、創設運動メンバーの一員であり初代校長を務めたP.A.Emeryが複数の著書や教材を執筆・作成したり、宗教的説教を行ったりしていたこと、また自宅に多くの蔵書を所有し、聾者コミュニティから尊敬される人物であったこと等である。一方で、新築の自宅や別荘などのの固定資産を所有し裕福と思われること、また1880年代後半になると一部のシカゴ聾者コミュニティからシカゴ校への運営に対するEmeryの手腕を疑う評価が発せられ、解任運動が興ったこと等が明らかとなった。これは従来通学制聾学校研究で用いられていた教育委員会年次報告などの公的な文書では明らかになっていなかった側面である。他にも、聾者教員のJ.E. Gallagher, W. George等の聾者コミュニティにおける活動や評価も一定程度明らかになってきた。今後は、このような聾者教員の特性や活動状況と聴者教員の特性や活動状況や経歴を比較検討すること等を通して、教育課程・指導法の選定やその基盤となる教育目的がどのように醸成されてきたのかについて更に分析できるよう、史資料の分析を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度途中に育児休業から職場復帰しており、子どもが1歳児前後とまだ手がかかるために、国内外出張が難しく、学会参加や資料収集を行うことができなかったため、すでに収集済みの史料の読解分析と論文執筆に留まったため。
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今後の研究の推進方策 |
研究時間の捻出のために、学内で公募のある子育て支援プロジェクトに申請し、研究補助者を雇用すること、また社会的資源を活用しながら子どもの保育等を休日に活用することなどを検討していく予定である。さらに、7月にギリシャで開催される聾教育国際学会へ参加し、関連領域の研究者等と意見交換を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
5月に育児休業より復帰したこととまだ子どもが小さく手がかかることから、研究時間の捻出が困難であったことと、国内外の出張や資料収集、学会発表や参加が困難であったことから、計画通りの助成金使用ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、学会に復帰予定であり、5月に名古屋で開催される学会への参加、7月にギリシャで開催される国際学会への参加、9月に仙台で開催される学会での発表を予定しており、旅費等での使用が促進されると考えられる。
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