研究課題/領域番号 |
25790002
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤井 慎太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 流動研究員 (70422558)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ炭素材料 / グラフェン / プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
ナノグラフェンでは端の存在により、エッジ状態と呼ばれる特異な電子状態が存在することが知られているが、(1)その化学活性の高さや(2)ナノ構造の作製自体が困難であるため、エッジ状態の実験的証拠は極めて少ない。エッジ状態は炭素材料の触媒機能や磁気機能および劣化過程と深く関連しており、その実験的解明が望まれている。本研究では、水素(酸素)化エッチングを駆使することで、原子レベルで規定された化学修飾ナノグラフェン端構造を作製し、プローブ顕微鏡による高分解能計測と密度汎関数計算に基づいた構造同定を行うことで、その電子(磁気)構造の解明を行った。 グラファイト表面の電気化学酸化により、原子レベルで均一に酸化されたエッジ構造を作製した。プローブ顕微鏡高分解能観察とDFTシミュレーションから、カルボニル基で終端された一次元ジグザグ端構造において、エッジ状態の発現を確認した(ACSNANO2013-1)。グラファイトの単原子欠陥の水素化により、様々な水素終端構造を持つ単原子欠陥を作製した。水素化の程度(欠陥内エッジに付加した水素数)に応じて、欠陥内のエッジ状態がON/OFFスイッチングすることを見出した(PRB2014)。また、酸化グラフェンの還元により作製された酸化点欠陥において、プローブ顕微鏡マニピュレーション(機械的外力)により欠陥内エッジ状態のON/OFFスイッチングが誘起できることを見出した(ACSNANO2013-2)。その結果、これまで未開拓であった、エッジ構造化学における特異なエッジ状態発現の基礎的知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高精度電子状態密度観察と密度汎関数法シミュレーションの直接比較で、原子レベルで整った、水素化・酸素化ジグザグ端の化学構造と、それによって劇的に変化し得る電子状態を同定し、これまで未開拓であった、エッジ構造化学における特異なエッジ状態発現の基礎的知見を得た。成果として、学術論文4報(PRB2013, ACSNANO2013-1, ACSNANO2013-2, PRB2014)、総説1報(AccChemRes2013)を発表した。
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今後の研究の推進方策 |
研究は当初の計画以上に進展している。今後は、基礎的な知見の得られた、グラフェン水素化原子欠陥、酸化グラフェン表面上の酸化原子欠陥について、トンネル分光計測を行い、電気的・磁気的機能の詳細について調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画よりも効率的にDFTシミュレーションが進んだために、次年度使用額が生じた。 当該助成金は、電子間相互作用を取り入れたDFT+U 法や、スクリーニング効果を取りたDFT-GW 法などの、より高度なDFT計算に充てる。高度なDFTシミュレーションを用いて、より現実的な多体効果を取り扱うことで化学修飾グラフェン端における電子相関効果発現メカニズムの解明を行う。
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