本研究ではスピントルク発振器によるスピン状態検出の理論構築を目指した。 初年度は最も簡単なマクロスピン近似のもとで、微小磁化と相互作用しているスピントルク発振器のシミュレーションプログラムの作成と数値計算を行い、微小磁化の始状態の違いをスピントルク発振器の発振状態によって区別可能であることを示した。 本年は微小磁化存在下におけるスピントルク発振器のマイクロマグネティックスシミュレーションを行うにあたり、始めに、微小な磁性薄膜中の磁化が取りうる安定な磁化状態に関するシミュレーションを行った。特に垂直磁気異方性をパラメータとし、直径および膜厚に対する安定状態の相図作成を行った。垂直磁気異方性が大きくなるにつれて有効的に膜厚が増加することになり、比較的大きな膜厚が必要な面直型やボルテックス型の磁化配置がより薄い膜厚で生じることが分かった。また異方性が大きい場合に特殊なボルテックス型の磁化配置が最安定状態になるが、このような磁化配置は一様な磁場の挿印のみでは現れないことが分かった。
|