研究課題/領域番号 |
25790019
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田中 俊輔 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (20454598)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ゼオライト様イミダゾレート構造体 / 膜分離 / ガス分離 / アルコール分離回収 |
研究概要 |
亜鉛イオンと2-メチルイミダゾールから構成されるZeolitic imidazolate frameworks-8 (ZIF-8)の薄膜化による膜分離への応用が期待されているが、分離膜として有意な報告例は未だ少なく、ZIF-8と支持体との密着性や結晶粒界の問題が指摘されている。そこで、本研究ではZIF-8と支持体との密着性を改善することを目的として、イミダゾール基を有するシリル化剤を用いて、多孔質アルミナ支持体を表面改質し、支持体表面におけるZIF-8の不均一核生成を誘導することを試みた。また、使用する金属塩種が膜構造ならびに気体分離特性に及ぼす影響について調べた。 硝酸亜鉛を用いて調製した場合、支持体上にZIF-8の結晶が堆積したのみであった。一方、酢酸亜鉛を用いて調製した膜では、結晶同士がインターグロースした緻密な連続膜が得られた。硝酸亜鉛を用いた場合、製膜時間は透過特性に影響しないのに対して、酢酸亜鉛を用いた場合では製膜時間を長くすると透過速度は減少する一方、透過速度比はKnudsen理論比を超えることがわかった。酢酸亜鉛はキレート構造を有する亜鉛源であるため、硝酸亜鉛よりもZIF-8の錯形成・重合反応速度が低下する。酢酸亜鉛を用いると反応初期の核生成が抑制され、結晶成長が促進されるため、均一な緻密膜が得られやすいと考えられる。本研究で得られたZIF-8分離膜は既報のZIF-8分離膜に比べて、水素/メタンの分離に有効であることが示された。 表面修飾した基材を用いることにより、従来法では必須であった種結晶の塗布工程を省略できることを実証した。また、反応性の異なる亜鉛源を用いることで膜構造を制御した。本研究の製膜条件は簡便な操作かつ水溶媒を用いた室温合成であるため、既報の方法に比べて製膜工程における環境負荷の低減が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示す研究項目の達成状況から判断した。結晶粒子を分離膜として用途展開するためには、種結晶を多孔質支持体上に塗布し、それを二次成長させることにより、結晶粒界を緻密化することが必要不可欠である。種結晶を利用する従来法と比較検討しながら、種結晶の塗布を省略した新しい製膜プロセスの条件を探索した。また、ガス透過による一次評価を行い、膜構造を調べた。その結果、イミダゾール基で多孔質アルミナ支持体表面を改質することにより、支持体表面上へのZIF-8結晶の不均一核生成ならびに優先的な結晶成長を誘導し、均一かつ緻密な多結晶膜を形成できることを実証した。本手法は、種結晶塗布プロセスの省略に加えて、有機溶媒の使用量の大幅削減が可能であり、製膜実プロセスへの展開が期待される。また、本手法で得られたZIF-8分離膜は高い水素透過性と水素/メタン選択性を示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
水溶液中でZIF-8を合成する本手法では、結晶骨格内の亜鉛にH2OあるいはOHが配位した結晶欠陥が残存すると考えられる。また、従来のゼオライト膜と同様、ZIF-8膜のガス透過特性は結晶粒界に大きく依存すると考えられる。一方、step-by-stepでZIF-8の結晶骨格をナノスケールで積層化できる知見を得ており、結晶骨格内欠陥の修復および結晶粒界の閉塞が可能であると考えている。今後は、結晶欠陥および結晶粒界の緻密制御の処理条件について検討し、性能向上のための指針を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が当初の計画以上に進み、試行錯誤的な実験が必要なくなったため、次年度使用額が生じた。 次年度に予定している研究計画では、試行錯誤実験が増加するため、物品費として計上する。
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