研究課題
亜鉛イオンと2-メチルイミダゾールから構成されるzeolitic imidazolate framework-8(ZIF-8)の薄膜化による膜分離への応用が期待されているが、分離膜としての有意な報告例は未だ少なく、ZIF-8と支持体との密着性や結晶粒界の問題が指摘されている。そこで、本研究ではZIF-8と支持体との密着性を改善することを目的として、イミダゾール基を有するシリル化剤を用いて、多孔質アルミナ支持体を表面改質し、支持体表面におけるZIF-8の不均一核生成を誘導することを試みた。また、使用する金属塩種が膜構造ならびに気体分離特性に及ぼす影響について調べた。硝酸亜鉛を用いて調製した場合、支持体上にZIF-8の結晶が堆積したのみであった。一方、酢酸亜鉛を用いて調製した膜では、結晶同士がインターグロースした緻密な連続膜が得られた。硝酸亜鉛を用いた場合、製膜時間は透過特性に影響しないのに対して、酢酸亜鉛を用いた場合では製膜時間を長くすると透過速度は減少する一方、透過速度比はKnudsen比を超えることがわかった。酢酸亜鉛の酢酸イオンは2-メチルイミダゾールと配位競合するため、硝酸亜鉛よりもZIF-8の錯形成・重合反応速度が低下することを明らかにした。酢酸亜鉛を用いると反応初期の核生成が抑制され、結晶成長が促進されるため、均一な緻密膜が得られる。表面修飾した基材を用いることにより、従来法では必須であった種結晶の塗布工程を省略できるZIF-8の製膜手法を確立した。また、反応性の異なる亜鉛塩を用いることで膜構造の制御が可能であることを実証した。本研究で得られたZIF-8分離膜は既報のZIF-8分離膜に比べて、水素/メタンの分離に有効であることを示した。さらに、本製膜手法は水溶媒を用いた室温合成であり、従来法に比べて製膜工程における環境負荷低減の合成指針を示した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件)
Journal of Membrane Science
巻: 472 ページ: 29-38
10.1016/j.memsci.2014.08.038