研究課題/領域番号 |
25790025
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
沖川 侑揮 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノチューブ応用研究センター, 研究員 (50635315)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 窒素ドープ / グラフェン / 差動排気システム |
研究実績の概要 |
前年度では、グラフェン合成時に微量の窒素を導入することで窒素ドープグラフェン合成を試みたが、グラフェン形成は確認されなかった。これは、グラフェンのプラズマCVD合成において、窒素原子を含む不純物がグラフェンをエッチングする、もしくは銅箔の触媒作用を抑制してしまうことなどが考えられる。上記研究結果から、窒素ドープグラフェン合成においてドープする窒素量を正確に制御する必要がある。 本年度は、プラズマCVD合成装置において差動排気システムと質量分析装置を組み合わせることでグラフェン合成中のガス分析技術を確立し、グラフェン合成時の窒素ドープ量をppmオーダーで制御することを目的とし研究を進めた。まず、上記技術の動作確認のため、CVD合成チャンバー内の圧力を一定にした水素雰囲気下(10Pa,30sccm)にマスフローを用いて微量の窒素を導入し、得られる窒素分圧を質量分析装置にてモニターした。その結果、窒素流量の増加(~0.1sccm)に従って、モニターしている窒素分圧も線形的に増加した。この結果から、差動排気システムを用いたガス分析が正常に動作していることを確認した。この結果をもとに、通常のプラズマCVD-グラフェン合成中のガス分析測定を行った。その結果、グラフェン合成を行うための水素プラズマ照射により、窒素の分圧が急激に増加することを確認した。数値に換算すると、水素分圧の1%以下の窒素分圧が検知されている。これはプラズマが照射されることでチャンバー内壁についた窒素が放出されたことが原因として考えられる。本技術を用いることで、窒素ドープ量を精密に制御するための有用な指針が得られると考えられ、現在、窒素がグラフェン合成に与える影響を検討中である。今後は、窒素ドープされたグラフェンを形成する際、アウトガスによる影響を考慮して、窒素ドープグラフェン合成を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラズマCVD装置に差動排気システムと質量分析装置を組み込むことで、プラズマCVDグラフェン合成中のガス分析を実現した。またグラフェン合成中に窒素混入があることを突き止め、窒素ドープグラフェンの制御性向上の指針が得られた。また、TEM観察用デバイスプロセスに関しても順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
窒素ドープグラフェン合成に関しては、アウトガスの影響で意図せず混入される窒素を考慮しながら、低温合成を行っていく。また窒素ラジカルの存在を確かめるためにプラズマ分光を進めていく。同時に、TEM観察用デバイスを作製し、結晶性評価と電気伝導特性を評価していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に関しては、ほぼ全額予定通り予算を執行したが、平成25年度に余剰した予算がそのまま残ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
TEM観察用フォトマスク及び導電性カンチレバーやSiN/Si基板を購入する。
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