本研究は、プラズマCVDにより低温合成したグラフェンに対して窒素ドープを施し、その電気伝導への影響と伝導機構の解明を目的として、3年間にわたって研究を進めた。 1年目には、グラフェン合成時に微量の窒素を導入することで窒素ドープグラフェン合成を試みたが、グラフェン形成はラマン分光測定からは確認できなかった。これは、プラズマCVD合成において、窒素原子を含む不純物がグラフェンをエッチングする、もしくは銅箔の触媒作用を抑制するなどが考えられる。 2年目には、プラズマCVD合成装置において差動排気システムと質量分析装置を組み合わせることでグラフェン合成中のガス分析技術を確立した。このガス分析技術をもとに、水素プラズマ照射時のガス分析を行った。その結果、プラズマ照射により、窒素の分圧が急激に増加することを確認し、その分圧値は水素分圧の1%以下を検知可能となった。これはプラズマが照射されることでチャンバー内壁についた窒素が放出されたことが原因として考えられる。 最終年度には、上記に示したプラズマ合成中のガス分析技術をもとに、微量の窒素量をコントロールすることで、プラズマCVDによるグラフェン合成を試みた。その結果、グラフェンが形成されている様子をラマン分光測定により確認した。次に、得られたグラフェンに対してXPS測定を行うことで、グラフェンに窒素原子が置換しているかどうかを調査した。その結果、非常に微量ではあるものの(1%前後)、グラフェン中に窒素が置換していることを確認した。
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