本研究課題では、ナノポアを通過する分子の速度を制御するサラウンドゲート電極と、低アスペクト比(ポア厚/ポア直径)ナノポアデバイスを融合することで、分子やナノ材料がナノポアを通過する際に生じるイオン電流の変化から、ナノポアを通過した1分子やナノ材料の3次元構造解析法の確立を目的としている。 本研究では、分子の速度をゲート電圧によって減速させることに成功し、さらにイオン電流変化からナノポア通過物質の構造解析に成功した。ゲート電圧によるナノポア通過分子の速度制御、およびナノポアを用いた構造解析はいずれも本研究が世界発である。 具体的には、直径150 ~ 900 nmのナノ粒子を最大で240倍ほど減速させ、DNA 1分子の速度は約10倍ほど減速させることに成功した。また、それらの粒子の3次元形状や、DNAのナノポア通過時の構造を定量的に解析することに成功した。また、最大でxy方向で約1 nm、z軸方向で約35 nmの空間分可能で構造解析に成功した。さらに、グラフェンナノポア作製のために、酸化還元グラフェン(RGO)の基礎特性に関する実験を行い、ヒドラジンのみを用いた還元法において、既存のRGOよりも高い導電性を示すRGOの作製に成功した。また、積層グラフェン構造を用いた新しい1分子構造解析ナノポアデバイスを提案し、理論的実証に成功した。さらに、実際の生体材料の構造解析も行い、細胞からの分泌物質であるエクソソームの形状識別に成功した。
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