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2013 年度 実施状況報告書

自己駆動しながら変形する油滴の新奇ダイナミクスの創成と環境応答性輸送担体への応用

研究課題

研究課題/領域番号 25790033
研究種目

若手研究(B)

研究機関東京大学

研究代表者

伴野 太祐  東京大学, 総合文化研究科, 助教 (70613909)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード自己駆動油滴 / 界面活性剤 / 環境応答 / イミン結合 / カーボネート結合 / 非平衡系
研究概要

近年,分子集合体の新奇ダイナミクスとして,マイクロメートルサイズの球形の油滴が界面活性剤溶液中を自ら泳ぐ現象(自己駆動現象)が注目されている。しかし,自発的に自己駆動を開始する油滴はこれまでに観測されておらず,そのメカニズムについては推測の域を出ていない。また,自己駆動する油滴の運動様式,方向や時間を制御するまでに至っていない点で,これを環境応答性輸送担体として利用する上では課題が残っている。そこで本研究では,油分子および界面活性剤分子の設計・合成を通じて,自己駆動する油滴の駆動時間と方向の制御と,自己駆動を開始する油滴および自己駆動しながら変形する油滴の構築を目的とした。さらに,油滴がマイクロメートルサイズの流路内を目的の場所に向かって変形しながら自己駆動するというシステムを構築することで,これの新たな環境応答性輸送担体としての応用を図ることとした。研究の初年度である本年度は,以下2点について検討を行った。
(1)自己駆動する油滴の駆動時間と方向の制御を目的に,カーボネート結合を有する新規二鎖二親水基型(ジェミニ型)カチオン界面活性剤を設計・合成した。水酸化ナトリウムを含んだ本界面活性剤溶液中での油滴の駆動時間は,カーボネート結合を有しない従来型のジェミニ型カチオン界面活性剤溶液中よりも長かった。また,本界面活性剤水溶液中において停止した油滴に高濃度の水酸化ナトリウム水溶液をある一方向から添加することで,その方向へ油滴が駆動することを見出した。
(2)環境応答して自己駆動を開始する油滴の構築を目的に,酸性条件下で加水分解されて自己駆動する油成分と長鎖アミン成分を生成する,イミン結合を有する油分子の設計・合成を行った。少量のカチオン界面活性剤を添加した塩酸中に本油分子を分散させたところ,水に不溶な凝集体が徐々に形態変化して球形の油滴となり,自己駆動を開始することを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度において得られた研究成果について,それらのダイナミクスが新たに合成した界面活性剤分子および油分子の加水分解により生じる分子群によって引き起こされることを明らかにしている。また,塩酸を含んだカチオン界面活性剤溶液中に脂肪族アルデヒドと長鎖アルコールを混合した油滴を分散させることで,油滴が自己駆動しながら変形するダイナミクスも見出している。以上のことから,本研究課題が計画的に遂行できていると言える。

今後の研究の推進方策

平成26年度においては,まず,自己駆動しながら変形する油滴について,それの作動原理を明らかにする。具体的には,油分子および界面活性剤分子のアルキル鎖長を種々変化させて油滴ダイナミクスの観測を行い,油分子と界面活性剤分子間にはたらく分子間相互作用がダイナミクスに与える影響を明らかにする。また,脂肪族アルデヒドと長鎖アルコールの反応による生成物および生成量が本ダイナミクスに与える影響についても検討を行う。
続いて,これまでに得られた知見をもとに,油分子あるいは界面活性剤分子の設計・合成およびマイクロメートルサイズの流路の作製を通じて,油滴が流路内を目的の場所に向かって変形しながら自己駆動するというシステムを構築することで,自己駆動する油滴の環境応答性輸送担体としての応用展開を図る。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度において合成した油分子および界面活性剤分子の反応率の算出と生成物の同定を行う際に,サイズ排除クロマトグラフィーの分析用および分取用カラムの購入を予定していた。しかし,これらの解析については研究機関保有の核磁気共鳴装置のみで十分であったため,平成25年度での購入を見送った。
平成26年度で行う,自己駆動をしながら変形する油滴について,その作動原理を明らかにするために,脂肪族アルデヒドと長鎖アルコールの反応による生成物および生成量が本ダイナミクスに与える影響について検討を行う。本反応においては,種々の化合物の生成が予想されるため,核磁気共鳴装置のみでは解析が困難である可能性が高い。そこで,平成25年度に購入を見送った,サイズ排除クロマトグラフィーの分析用および分取用カラムを購入する予定である。また,マイクロメートルサイズの流路の作製については外部委託することも検討している。その他有機合成試薬や観測に必要な消耗品の購入,さらに,成果発表を行うための旅費としての使用を予定している。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Mode Changes Associated with Oil Droplet Movement in Solutions of Gemini Cationic Surfactants2013

    • 著者名/発表者名
      Taisuke Banno, Shingo Miura, Rie Kuroha, Taro Toyota
    • 雑誌名

      Langmuir

      巻: 29 ページ: 7689-7696

    • DOI

      10.1021/la401416h

    • 査読あり
  • [学会発表] 長鎖アミン生成によって自己駆動を開始する油滴2014

    • 著者名/発表者名
      田中雄喜,伴野太祐,豊田太郎
    • 学会等名
      日本化学会第94春季年会
    • 発表場所
      名古屋大学東山キャンパス(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      20140327-20140330
  • [学会発表] 自己駆動しながら境界膜を形成するマクロエマルション液滴2013

    • 著者名/発表者名
      田中雄喜,伴野太祐,豊田太郎
    • 学会等名
      「細胞を創る」研究会6.0
    • 発表場所
      慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス(山形県鶴岡市)
    • 年月日
      20131114-20131115
  • [学会発表] カチオン界面活性剤水溶液中で駆動する油滴の運動制御2013

    • 著者名/発表者名
      三浦真吾,伴野太祐,豊田太郎
    • 学会等名
      第64回コロイドおよび界面化学討論会
    • 発表場所
      名古屋工業大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      20130918-20130920
  • [学会発表] 水中を駆動する細胞サイズの分子集合体の運動モード2013

    • 著者名/発表者名
      豊田太郎,伴野太祐
    • 学会等名
      第64回コロイドおよび界面化学討論会
    • 発表場所
      名古屋工業大学(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      20130918-20130920
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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