研究課題/領域番号 |
25790039
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
新関 智彦 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (40567749)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トンネル磁気抵抗効果 / ハーフメタル / マグネタイト / スピネル / フェライト |
研究概要 |
平成25年度はFe3O4上にスピネル型酸化物(例 CoCr2O4)を成長させ、その障壁層としての評価を行った。具体的にはMgO(001)単結晶基板上に反応性スパッタリング法によりFe3O4/X 二層膜Fe3O4/X 二層膜(X = CoCr2O4 or MgTi2O4)を作製した。作製するスピネル型酸化物ごとに、マスフローコントローラでO2流量を高精度に制御することでAサイト、Bサイトに入るカチオン、およびその価数を制御した。高速反射電子線回折(RHEED)像からFe3O4上に成長させたスピネル酸化物がスピネル型結晶構造特有のストリークを示すことを確認した。Fe3O4上のスピネル型酸化物について結晶性、表面平坦性を評価した。原子間力顕微鏡によってスピネル型障壁層の表面構造解析を行い、さらに表面平坦性の評価を行った。試料の結晶性を高速反射電子線回折により評価した結果、CoCr2O4は基板温度を高めた場合にのみスピネル構造を有することが分かった。しかしながらパターンはスポット状に近く、結晶性は劣ることが示唆された。次にCoCr2O4の平均自乗面粗さを原子間力顕微鏡により評価した。トンネル接合の障壁層として用いるには平均自乗面粗さは0.2 nm以下となることが望ましいが、CoCr2O4の平均自乗面粗さは1 nm以上と非常に大きなラフネスを有することが分かった。そこで、第二候補として挙げたMgTi2O4障壁層の作製に計画を修正した。このMgTi2O4については高速反射電子線回折像が非常に明瞭なストリークを示し、良好な結晶性および表面平坦性を有することが示唆された。これを原子間力顕微鏡で評価した結果、平均自乗面粗さが0.1 nm以下という極めて平坦な表面を実現することができた。以上より、スピネル酸化物障壁層としてMgTi2O4が最適であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度中の目標であった、Fe3O4上におけるスピネル型酸化物成長の最適化を終了したため。 材料として当初予定していたCoCr2O4が所望の平坦性および結晶性を満たさないため、第二候補として挙げたMgTi2O4障壁層の作製に計画を修正したが、その後、MgTi2O4がスピネル酸化物障壁層として最適であることが判明し、現在は当初の進行ペースを保っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はFe3O4/スピネル型障壁層/Fe3O4三層ヘテロ構造を作製し、その磁気伝導特性を評価する。具体的には平成25年度に得た知見を生かしてFe3O4/スピネル型障壁層/Fe3O4三層ヘテロ構造およぴ導電性キャップ層(Pt)を作製する。面内磁気抵抗測定法により試料の抵抗値および磁気抵抗効果を測定し、高いTMRが得られるか、また障壁層厚さとトンネルコンダクタンスの関係が既存の結晶性バリアと同等か否かを調べる。 また、超電導トンネル分光により Fe3O4/スピネル型障壁層界面のスピン偏極度を評価する。具体的には超電導トンネル分光のために三層ヘテロ構造の上部層を Fe3O4 から超電導材料(Al, Nb, LiTi2O4 など)に変え、さらに有限なバイアス電圧を印加するために、リソグラフィ技術によりマイクロメータサイズの素子に微細加工して、膜面垂直方向の磁気伝導特性を測定可能にする。四端子法測定により室温および低温(液体He温度程度)において高磁場中で微分コンダクタンス特性 (dI/dV-V) を測定し、ハーフメタル特有のピークスプリットを確認するとともに、Fe3O4の界面第一層におけるスピン偏極度を評価する。また、Fe3O4のVerwey転移(金属-絶縁体転移)温度付近におけるdI/dV-V特性の変化も観測する。伝導特性の測定には現有の物性測定装置を用いる。 本研究を遂行する上での工夫としては面内磁気抵抗測定法(Current in plane tunneling method: CIPT)を用いることである。これにより強磁性トンネル接合の最適化を極めて高効率に行うことが可能となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
科研費交付後すぐに他大学へ異動したため直接経費支出0円だが、初年度は使用しなくても研究を遂行することができた。 前年度の交付金は、当初、リニアシャッターおよびスパッタカソードとして使用予定だったが、減額されたためリニアシャッターおよびフランジマウントの導入に当てる予定である。前年度に予定していた研究は計画どおり進行しており、次年度使用額の発生による影響は軽微である。
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