研究課題/領域番号 |
25790040
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松島 敏則 九州大学, 最先端有機光エレクトロニクス研究センター, 准教授 (40521985)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 分子配向 / イオン化ポテンシャル / キャリア移動度 / 有機太陽電池 / 表面ダイポール / 開放電圧 |
研究概要 |
本研究では、キャリア注入に影響を及ぼすと考えられるキャリア注入障壁と波動関数の重なりについて検討を行うことから、ヘテロ接合界面における分子配向とキャリア注入の関係を明らかにすることを目指している。本年度は主に以下のような研究成果を得た。 本年度は、通常の水素終端されたチオフェンオリゴマー(H-6T)、フッ素で置換されたチオフェンオリゴマー(F-6T)、アルキル鎖で置換されたチオフェンオリゴマー(C6-6T)の分子配向とイオン化ポテンシャルの関係について検討した。ラビングによりH-6Tの分子配向を基板に対して垂直配向から水平配向に制御すると、膜表面から内部に向かう表面ダイポールが形成されるために、イオン化ポテンシャルが約0.4 eV増加することを見出した。電子吸引性のフッ素で置換されたF-6Tを同様に水平配向させると、より強力な表面ダイポールが形成されるために、イオン化ポテンシャルが約0.6eV増加した。一方、電子供与性のアルキル鎖で置換されたC6-6Tを水平配向させると、逆向きのダイポールが形成されるために、イオン化ポテンシャルが約0.1eV減少することわかった。つまり、本研究で観測されたイオン化ポテンシャルが増減する量や方向は、膜表面に形成される表面ダイポールの強さや向きで制御可能であることがわかった。 P層としてH-6TとN層としてPTCBIを用いた有機太陽電池を作製した。H-6TとPTCBIを水平配向させると、短絡電流、開放電圧、フィルファクター、変換効率が向上することを見出した。P層のHOMOとN層のLUMOの差が有機太陽電池の開放電圧に影響を及ぼすことが知られている。本研究では、分子配向によりHOMO-LUMO差を制御することで、開放電圧を向上させることに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分子配向の制御技術および分子配向を制御した際の電子物性の研究に関しては着実に進展しており、重要な研究成果が蓄積されていっている。また、太陽電池へと応用し、分子配向を制御することで太陽電池特性が大幅に向上することを見出した。但し、本研究で用いた有機分子の電子状態を量子化学計算により最適化することに関しては遅れ気味であり、総合的には(2)と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
遅れ気味である量子化学計算を早急に終わらせる予定である。シングルキャリアデバイスを作製し、得られた電流密度-電圧特性とイオン化ポテンシャルや量子化学計算結果を比較することから、分子配向とキャリア注入に関して総合的な知見を確立する予定である。また、室温の電気物性測定だけではキャリア注入機構を解明することは困難であるので、平成25年度中に整備しておいた真空プローバーを用いて電流密度-電圧特性の温度依存性を測定する予定である。
|