液晶は、電場、磁場、温度、機械応力などに反応する機能性材料であり、螺旋構造をもつ液晶は、温度や電場で波長制御が可変な素子として知られている。近年では、螺旋構造をもつ液晶は一次元フォトニック結晶として注目され、チューナブルなフォトニック結晶として研究されてきた。本研究の目的は、強誘電性液晶を用いてバンド幅可変な光学フィルタを実現することである。本年度は、バンド幅の制御が電圧印加によって実現可能であるかを調べるため理論計算と実験を行った。
強誘電性液晶の螺旋構造の配向変化を連続体理論を用いて計算し、電場と螺旋ピッチの関係について考察した。電圧による螺旋の伸長は、単に螺旋が伸びるわけではなく、螺旋構造に歪みを伴う。そのため、螺旋構造が歪みを伴った状態でもバンド幅可変のストップバンドが実現できるかを確認した。
理論計算によって得られた液晶の配向状態を用いて、4×4マトリクス法で強誘電性液晶の光伝搬を計算した。垂直入射時の透過スペクトルの変化によって計算結果を検証したところ、実験結果と計算結果は非常に良い一致を示した。このことより、計算により、螺旋構造の変化に伴う強誘電性液晶の光学特性を再現できていることが確認できた。また、理論計算により、入射角と印加電圧を制御することで、バンド幅可変なストップバンドが実現可能であることが確認できた。実験によって、液晶セル中の螺旋の伸長および変歪の状態の確認は行えている。今後、最適な印加電圧の条件を調べ、バンド幅可変なストップバンド実現のため研究を進めていく。
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