本研究の目的は,無容器法を用いて高い相転移温度と高い自発分極値を有する強誘電体の合成技術を開発することである.そのため無容器法の一つであるガスジェット浮遊法を用いた結晶合成システムの構築,結晶合成を行った. 初年度であるH25年度には,ガスジェット浮遊法を用いた試料合成システムを広島大学に導入するため,試料加熱用の炭酸ガスレーザーや試料浮遊用のガス導入系を購入して試料合成システムを構築した. H26年度には,この合成システムのレーザー照射方向を制御できるように光学系とガス流量を精密に制御できるようにガス流量制御系とを改造してより簡便で安定した結晶合成を行えるように高度化を完了させた.この構築した試料合成システムを用いて,主にBa-Ti-O系強誘電体の構成イオンを元素置換した結晶の合成を行い,放射光回折実験による結晶構造解析を行った.その結果,本研究の目的とする高い相転移温度と高い自発分極値を有する強誘電体の合成には至らなかったものの,その方法について新しい知見が得られた.これらの成果まとめ,国内外の学会で講演した. H27年度には結晶合成過程の観察や高温での結晶構造解析を行うため,この合成システムと九州シンクロトロン光研究センターでの放射光回折装置を組み合わせた装置を開発し, 1500℃を超える超高温下での放射光回折実験に成功した.これらの成果を国内外の学会や研究会で講演した.また,これまでに合成した新規な強誘電体についてまとめた解説記事を出版した.
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