研究実績の概要 |
III-V化合物半導体の高品質化を達成する技術の中に熱膨張係数などの物性が異方性を伴う面方位成長を行うことがあり、この場合、半導体薄膜内に異方性応力が導入されるので、従来の等方性応力評価手法を改善する必要がある。本課題では液浸ラマン分光法によるIII-V化合物半導体最表面の異方性応力評価技術について検討した。初年度(H25)でc面GaN, およびAlGaNのラマンスペクトルの同定、X線回折(XRD)による応力測定など、異方性応力評価に必要な情報について検討した。また、特に表面、あるいは薄膜評価が望まれることより、最表面評価技術として表面増強ラマン分光法の適用について調査した。 最終年度(H26)でSi, あるいはAl2O3基板上のc面GaN試料について異方性応力評価を達成するために必要なフォノン変形ポテンシャル(PDPs)の導出を試みた。2種類のアプローチを採用した。1つ目は、本研究で試作した2-4インチ基板に引っ張り応力を印加可能な応力試験機を利用して、GaNのラマンピークシフトと印加応力の関係からPDPsを求めた。2つ目は、GaNのE2, およびA1LOモードのピーク位置とXRDで求めた応力値からPDPsを導出した。さらに、c面の他、複数面方位(a, m, s面)のGaN試料を準備して、本手法を適用する上で必要な各面方位におけるラマン偏光選択則を検討した。偏光方向x, yの全ての組合せにおける偏光則を調べて、計算結果と一致することを見た。Si, Al2O3基板上c面GaN試料について、液浸ラマン分光法を行った。その結果、c面後方散乱配置では通常ラマン不活性であるE1TOモードを励起した。さらに、このE1TOのピーク位置は、ドライラマンで得られるE1TOに比べて低波数側にシフトしており、これは、A1TOモードとmixingした結果であることを明らかにした。この結果は、III-V化合物半導体の詳細な異方性応力評価を行う上で重要な知見となる。
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