研究課題
物性物理において電子と格子の協調の理解は重要であるが、それらが原子スケールで同時に観測されることはなかった。本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)と走査トンネル顕微鏡(STM)を同時に用いて、In/Si-4x1表面上の電荷密度波(CDW)の観測を行った。申請書で掲げた【課題1】『STMとAFMによる同時観測』ではAFMとSTM画像化位置の対応を明らかにした。【課題2】『KPFMによる電荷分布の観測』ではInがSiより100mV高電位であること、【課題3】『原子欠陥の影響』ではSTM像に現れる欠陥周辺のCDW的変調はAFMでは観察されないこと、【課題4】『探針の影響』では、探針が0.3nmまで近づくと、CDWの変調が消失することが明らかになった。【課題1,3】に関連して、エネルギー散逸像より特定のIn原子鎖がやわらかく力学的に不安定であることを明らかにした。これはCDWの前駆的現象の力学をAFMにより原子分解能で調べた先駆的な発見であり、APEX誌で即座に公開された。このようなAFMによる力学的特性の評価の到達点として、平面的な単一分子のヤング率を評価することに初めて成功した。この成果は表面科学会講演奨励賞、分子アーキテクトニクスポスター賞およびATIポスター賞を受賞し、Nat. Comm.誌に投稿された。さらに電子と格子が作用して起こるSi4原子スイッチを、AFMとSTMによる力と電流で同時にスイッチさせることに成功した。【課題1】AFMとSTMによるSi4原子スイッチ状態の同時画像化、【課題3】Si欠陥によるスイッチ阻害、【課題4】探針による力スイッチを観測した。この成果はISSS-7およびICSPMのポスター賞を受賞、Nano Lett.誌に投稿された。以上のように、AFMとSTMを同時に用いて、電子と格子の相互作用、電流と力による原子スイッチなどの先駆的な結果を得た。
http://www.afm.eei.eng.osaka-u.ac.jp/
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