研究課題/領域番号 |
25790058
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大田 晃生 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (10553620)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抵抗変化型メモリ / 金属ナノドット / 走査プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
シリコン酸化薄膜 (SiOx)を抵抗変化誘起層に用いて、Niナノドットを電極として活用したナノスケールのNi/SiOx/Ni MIMダイオードを作成し、局所領域の抵抗変化特性を調べた。また、SiOxに金属ナノドットを埋め込み電界集中効果による低電圧動作化や、SiOxと比誘電率が大きく異なるTiO2の積層による電流制御を試みた。 具体的に、SiOx/Ni構造上に電子線ビーム蒸着法により均一な極薄Ni膜を形成し60MHzの高周波電力の誘導結合により励起・生成した高密度水素プラズマに曝すことで、Niナノドットを高密度に一括形成した。プラズマ照射中にNi膜の表面温度の上昇(320ºC程度)が実測されることから、表面で原子状水素吸着・再結合が生じ、Ni原子の表面マイグレーション・凝集が促進され、Niナノドットが形成したと解釈できる。プラズマ照射時の圧力と投入電力を調整し、Niナノドットのサイズ分布および密度を制御した。AFM/KFM測定よりドット間が電気的に絶縁分離されていることを確認した試料において、単一のNiナノドット(平均直径:~17nm)とAFM 用の導電性探針を固定し、さらにAFM測定系と半導体パラメータアナライザを接続することで、電流-電圧測定を行った。初期負バイアス掃引において、フォーミング動作が認められ、その後、印加電圧の極性に依存しない明瞭なユニポーラ型の抵抗変化動作が繰り返し認められた。別途作製したミクロンオーダーのMIMダイオードと特性を比較すると、上部電極サイズが縮小するに従い、OFF電流が徐々に低下しON/OFF抵抗比が増大し、スイッチング回数も増加する傾向があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書に提案した金属ナノドットを電極に活用した微小なMIMダイオードを作成しサイズ縮小に伴い顕在化する抵抗変化現象を調べるという初年度の第一の目的は達成することができ、おおよそ順調に研究は進んでいる。当初計画では、Ti 系の金属ナノドットを電極に用いる予定であったが、実験を進めるに伴いTi薄膜へのリモート水素プラズマ処理ではナノドット形成が難しいと判断された。そこで、一部材料を変更するため、第4周期遷移金属に対してドット形成可能か系統的に評価を行い、ナノドット形成が確認できた材料の中でも、比較的Si-ULSIと親和性のあるNiを選択し研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ナノ構造体・界面の局所電子状態を制御し、ナノサイズのダイオードに有効な低消費電力化・多値メモリ化などの特性向上に向けた材料・デバイス設計指針を構築することを目指す。 一つの方法として以下のアプローチ考えている。電気抵抗変化は絶縁破壊に類似した現象であり、熱酸化やCVD で形成したSiO2 の絶縁破壊が電界で一定であることや、上部・下部電極間に形成される導電性パスの開閉に起因していることを参考にすると、SiOx 抵抗変化層への欠陥(酸素欠損)導入もしくは膜厚の薄膜化により低電圧で電気抵抗変化が可能となると考えられる。そこで、薄膜化しつつSiOx 中の酸素欠損の形成を促進するために、Si とO の結合よりも結合力の高いN およびF の微量添加を試みる。このとき、薄膜化や欠陥導入に伴うOFF 電流増大を抑制し抵抗変化層へ効率的に電圧を印加するために、SiOxよりもが比誘電率が20 倍程度大きくかつEg の小さいTiO2を電流制御層として電極/SiOx 界面に挿入する。ミクロンオーダーの素子においては、TiO2を積層することで電流制御できることは確認しており、素子縮小した場合におけるその有効性を検証する。電極/抵抗変化誘起層界面近傍の化学構造の詳細分析を行うと伴に、電極/導電性パス間でのキャリア輸送等を調べ、低電圧・低電流動作や多値化などの性能向上に向け、界面近傍での化学反応・電子状態を制御することを試みる。さらに、X 線光電子分光(XPS)により、金属ナノドットの仕事関数、金属ナノドット/SiOx/TiN 構造のエネルギーバンド構造を評価し、伝導メカニズムを議論する。ナノスケールまで素子微細化しても、高精度に制御可能な多値値メモリを作成する。
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