本年度は、酸素との反応性が高く複数の結合状態が存在し、その酸化物も抵抗変化層として機能することから、導電パスの消失が促進されることや酸素空孔の生成・消滅の起点となることに期待して、MnナノドットおよびMn 極薄層をSiOx膜に埋め込み、抵抗変化特性に及ぼす影響を調べた。 下地基板上に、電子線蒸着によりNi下部電極、SiOx、Mn極薄層を順に積層した。続いて、外部非加熱でリモート水素プラズマ処理を行い、面密度が11乗以上のMnナノドットを一括形成した。その後、抵抗変化誘起層としてSiOx (x=~1.8)とNi上部電極を形成した。また、比較として、Mn層およびMnナノドット形成プロセスを省略した試料も同時作製した。 ダイオードの電流-電圧特性より抵抗変化特性を評価した。Mn薄膜およびMnナノドットの有無に依らず、SETおよびRESET動作後に電流レベルが繰り返しスイッチし、印加電圧の極性に依存しないユニポーラ型の抵抗変化動作が認められた。Mn薄膜およびMnナノドットを埋め込むことで初期電流レベルが大幅に低減し、スイッチング中のON/OFF抵抗比も向上した。XPS分析より、埋め込んだMnの一部が酸化状態であることを確認しており、SiOxだけでなくMnOxも抵抗変化を誘起している可能性が高い。特に、Mnナノドットを埋め込むことでSET電圧とRESET電圧の分布が明瞭に分離し、1.5V以下で安定動作する。さらに、Mnナノドットの埋め込みによる特性改善に注目し、Mnナノドットの平均高さが6nmでほぼ同等で面密度が異なる試料を作成した。Mnナノドットの高密度化に伴いON/OFF抵抗比は増大し、面密度が4.7e11cm-2では約3桁となる。この結果は、ナノドットの高密度化による微細導電性パスの増加に加え、電界集中によるパス形成の高品位化が示唆される。
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