研究課題/領域番号 |
25790063
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石井 順久 東京大学, 物性研究所, 助教 (40586898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 赤外光パラメトリックチャープパルス増幅器 / 高次高調波 / アト秒 / 軟X線 |
研究概要 |
1.水の窓電場波形依存高次高調波と光量増大ならびに圧力依存性の検証結果 去年まで開発していた赤外OPCPAレーザーをオペレーションして、高次高調波発生用真空システムを用いて水の窓電場波形依存高次高調波発生実験を行った。この成果は世界で始めて達成され、その結果がNature Communications誌に発表された。この実験ではX線分光器後の水の窓電場波形依存高次高調波の光量を定量的に測定した。この実験は赤外OPCPA光源と高次高調波発生真空系設置改良によってなされた。高圧ガスセルの製作を検討している。高調波発生ガスセルは2気圧程度まで背圧をあげられ、この範囲内で水の窓高次高調波の光量と圧力の依存性を測定した。現在までに高圧ガスによって高調波発生を行うことによってフラックスの向上を確認しており、更なる圧力を加えられるよう、高調波発生の実験系を改良中である。ターボポンプの置き換え、新たな低流量の高圧ガスセルと専用高調波発生チャンバーとルーツポンプまたはドライポンプ等を組み合わせることによって更なる背圧をかけられるように設計する予定である。 2.軟X線ビームライン設置 これまでの実験は大型の商用製品であるX線分光器を用いて水の窓領域高次高調波を測定した。アト秒パルスを測定するためには光電子分光を用いるために、光電子分光器と既存のX線分光器の両立をするためにチャンバーの構築を進めているところである。発生した軟X線 をモニターするために小型軟X線分光器を製作し、光電子分光チャンバー内に納める準備が整っている。また軟X線を反射させ赤外線とのクロスコリレーションをとるためのビームラインをチャンバー内にセットアップした。また他の光学素子ならびに遅延時間をつける真空対応ステージ等を用意している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究目標の1番目である、赤外OPCPAレーザーによる赤外電場波形依存水の窓高次高調波発生については、開発された赤外OPCPAレーザーは非常に安定度が高く、高次高調波発生実験は非常に効率よく行われており、安定した圧力依存性の検証を行えている。水の窓電場波形依存高次高調波発生実験によって、その結果がNature Communications誌に発表された。高圧ガスセルの製作は完成しており、すぐに、光量の更なる増大を検証できると思われる。また高調波発生の実験系の改良においても、手配中の物品等中である。ターボポンプの置き換え、新たな低流量の高圧ガスセルと専用高調波発生チャンバーとルーツポンプまたはドライポンプ等を組み合わせることによって更なる背圧をかけられるように、早々に実験に着手できる。 また昨年度の研究目標の2番目である、軟X線ビームライン設置についてはおおむね当初の計画通り建設が進んでいる。これまでの実験系を改良しつつあり、アト秒パルスを測定するためには光電子分光を用いるために、光電子分光器と既存のX線分光器の両立をするためにチャンバーの基本的設計は終了し、構築を進めているからである。 まとめると昨年度達成された2つの目標をほぼ達成し、今年度に計画されている光ストリークチャンバーによるアト秒パルス計測と光電子分光測定が可能となり、当初の実験計画をスムーズに進めていくことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究実施計画は光ストリークチャンバーによるアト秒パルス計測と光電子分光測定を行う予定である。 今年度の研究目標の1番目として、アト秒パルス計測を行う。 ガスを導入しガスに軟X線と赤外線をあて出てきた光電子のエネルギーを測定するためにTime of Flight型光電子分光装置(TOF)を備える。光ストリークは赤外光と軟X線との希ガス内におけるクロスコリレーションによって行う。従来のクロスコリレーションはレーザー強度に依存するものであるが、アト秒ストリークは赤外電場のベクトルポテンシャルに敏感な測定手法である。軟X線を照射し出てきた電子がそのときの赤外電場の持つベクトルポテンャル分エネルギーシフトを受け、軟X線と赤外電場の時間差に依存する光電子スペクトルが変化する。中赤外光と軟X線の相対時間をスキャンすることによって得られるスペクトルグラムを解析することによってアト秒パルスの郡遅延が再構築でき、アト秒パルス計測が可能になる。 2番目として、上記のアト秒パルス計測が達成できた後には、同じセットアップを用いて、アト秒と赤外電場によるポンプ・プローブ法を用いたアト秒時間分解分光を行う予定である。電場周期が長い赤外光を用いると、長時間光ストリークが行える。これにより例えばキセノンをターゲットとした高次高調波発生における発生した軟X線を長時間ストリークすることにより、希ガスの外郭と内殻電子の相関測定を時間分解分光を行える。希ガスによって発生する、軟X線によって生じたオージェ電子の緩和等の測定に応用することが出来る。これは電気掃引オシロスコープと同様に光で1ショットによって、赤外の周期の間電子が掃引出来ることになる。アト秒パルス計測が終わったのに時間の許す限りアト秒分光を進めていきたい。
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