本研究では、波長2 μm領域で発振するようなフェムト秒レーザー光源の開発を目的としている。本研究では、主にツリウム添加ZBLANファイバーを用いたレーザー発振器を開発することにより、超短光パルスの発生を試みており、前年度はレーザー発振器をモード同期させる段階まで成功していた。今年度は励起光源も含めて構成素子の見直しを行い、出力パルスの最適化を行った。 まず、励起光源をチタンサファイアレーザーからシングルモードファイバー出力のレーザーダイオードに交換した。このレーザーダイオードは最大出力がチタンサファイアレーザーの1/5程度と低いため、2台用いることで励起パワーの不足分を緩和した。また、共振器内の反射鏡やビームスプリッターなどの光学素子を、より広帯域に対応した特注部品と交換することで、スペクトルの広帯域化を試みた。さらに、共振器内のパルスの挙動に注意しながら偏光光学素子や分散補償素子などの調整を行うことで、マルチパルス動作を回避できる条件を検討した。以上の改良の結果、安価なレーザーダイオードを励起光源として使用したにも関わらず、出力パルスエネルギーは38 mWと前年度よりも3倍近く向上することができたと同時に、パルス幅も41 fsと前年度よりも10%程度短縮することができた。 さらに簡便なシステムを開発するために、ダブルクラッドZBLANファイバーを用いてレーザー発振器の開発を行った。ダブルクラッドファイバーは、安価で高出力だが低ビーム品質なマルチモードレーザーダイオードを励起光源として使用できるのが特長である。このシステムにおいて上記と同様の調整を行った結果、100 mW程度の出力で90 fsの時間幅を持つパルスを得ることができた。すなわち、上記のシステムよりさらに安価に、波長2 μm領域において100 fsを切るような時間幅を持つパルスを発生させることに成功した。
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