糖尿病合併症のバイオマーカーとしてソルビトールの有効性が示唆されている。本研究は、ソルビトールを選択的かつ高感度に計測できる小型なバイオセンサシステムを開発し、バイオマーカーとしてのソルビトールの有効性を検証することを目的としている。今年度は、バイオマーカーとしてのソルビトールの有効性検証に向けて、これまで開発してきたバイオセンサを、糖尿病モデル動物の生体液中ソルビトール計測に展開した。 まず、動物実験を行う前段階として、生体試料の前処理方法の検討を行った。その結果、遠心分離で得られた血漿に、過塩素酸を加えてタンパク質を除去した後、水酸化カリウムを入れてpH調整を行うことで、全血中ソルビトールの計測が可能であることが分かった。また、尿については、イオン交換樹脂を用いて酵素阻害の一因となる塩類を除去した後、全血と同様の前処理操作を行うこととした。 生体試料の前処理方法を検討した上で、事業倫理審査委員会の承認を受けて、糖尿病モデルラットを用いた動物実験を実施した。その結果、正常ラットと比較して、糖尿病モデルラットでは、生体液中のソルビトール濃度が高い傾向にあることが確認できた。また、血液および尿中ソルビトール値の間に相関関係があることが分かった。さらに、市販されているソルビトール測定用試薬であるF-kitでも計測を行った結果、開発したセンサと同様の傾向が得られた。以上より、今回開発したセンサが生体液中のソルビトール計測に応用可能であることが示唆された。
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