研究課題/領域番号 |
25790080
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
岩瀬 謙二 茨城大学, 工学部, 講師 (00524159)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中性子 / 小角散乱 / 水素貯蔵 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
25年度年度にはその場観察中性子小角散乱測定用の試料セルの開発を行い窓部の厚み等の仕様を決定した。水素吸蔵合金の中でも標準的な水素吸蔵放出特性を示すLaNi5合金の測定を行い合金と水素化物相間で明瞭なスペクトルの違いを観察し、測定方法を確立した。26年度は、25年度の実績を踏まえLaNi5とLa2Ni6.8Al0.2超格子型合金の中性子小角散乱測定を水素雰囲気下で実施した。25年度に得られた実験結果の再現性を確認するためにLaNi5の測定を実施した。LaNi5とLaNi5D6.3の測定を行った。散乱ベクトルqが0.6nm-1以上の領域で、LaNi5D6.3のスペクトルの傾きが変化し表面構造がラフに変化していた。25年度に得られた実験結果と同様の傾向を示しており、実験結果の再現性が確認された。 La2Ni6.8Al0.2超格子型合金はMgZn2型とCaCu5型のセルがc軸方向に1:2の割合で積層した結晶構造(六方晶)を有する。格子定数は、a = 0.52nm, c = 2.43nm程度である。LaNi5の格子定数a = 0.51nm, c = 0.39nm程度と比較すると、c方向に長く結晶構造が複雑になる。重水素吸蔵前のLa2Ni6.8Al0.2、重水素吸蔵中のLa2Ni6.8Al0.2D2.8, La2Ni6.8Al0.2D10の3試料の小角散乱測定を実施した。La2Ni6.8Al0.2とLa2Ni6.8Al0.2D2.8のスペクトルはほぼ同じ形状・傾きを示した。La2Ni6.8Al0.2D10の測定強度は他の2試料に比べて高く、散乱ベクトルqが0.6nm-1以上の領域で傾きが明らかに異なることが得られた。水素吸蔵量の違いがナノ構造に影響を与えることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度にその場観察中性子小角散乱測定法を確立し標準的なLaNi5の合金相、重水素化物相の測定を実施した。26年度は、再度LaNi5の測定を行い実験結果の再現性を確認した。 標準的なLaNi5の他に、単位格子がかなり大きいLa2Ni6.8Al0.2の小角散乱測定を実施した。水素の吸蔵量の違いによる小角散乱スペクトルおよびナノ構造変化を明瞭に捉えることができた。これまでに超格子型合金の小角散乱測定データの報告例はない。おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、La2Ni6.0Co1.0超格子型合金の測定を実施する。Niの一部を他の元素で置換することによって水素吸蔵放出特性が大きく変化する。これまで、X線回折や中性子回折によって結晶構造解析を行ってきたが、明瞭な違いは得られなかった。水素吸蔵放出特性の違いが表面のナノ構造に由来すると推察した。Al置換とCo置換によるナノ構造の違いを明らかにする。標準的なLaNi5、La2Ni6.8Al0.2、La2Ni6.0Co1.0のナノ構造変化を比較し、水素吸蔵放出特性とナノ構造変化との相関を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
その場観察中性子小角散乱測定を実施する前に、PCT測定(pressure-composition-isotherm)によって水素吸蔵放出特性を詳細に調べる必要がある。水素を吸蔵させる前に、吸蔵を容易にさせるための活性化処理を行う。活性化のためには低温下で実施する必要がある。そのため、平成26年度生じた繰越金によって、-60℃まで低温に保持することが可能な恒温装置を購入した。26年度に生じた繰越金と恒温装置購入金額に差額が生じたため、27年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
水素吸蔵放出特性を評価する際には、耐圧性かつ低温下で使用可能なSUS製ホルダーに合金試料を入れて行う。SUS製試料ホルダーを複数個(3~5個程度)購入する計画である。 試料から水素を放出させる際に真空ポンプを用いて減圧する必要がある。真空ポンプを購入する計画である。
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