研究実績の概要 |
H27年度も、前年度に引き続き、H25年度に放射性エアロゾルのサンプリング・分析のため、米国フェルミ国立加速器研究所のMeson testビームラインにおいて、120 GeVの陽子ビームを照射した純金属のターゲット(Al, Co, Ni, Cu, Y, Au)中に生成した軽核:Be-10, Al-26の生成断面積の測定を行った。得られた測定結果と過去の報告例から、Be-10, Al-26の生成断面積の入射エネルギー依存性、標的核依存性、に関して考察した。尚、Be-10, Al-26の測定は、東京大学タンデム加速器研究施設における加速器質量分析(AMS)により行った。また照射試料をAMSに供するための化学処理(Be, Alの分離)は京都大学原子炉実験所のホットラボラトリにおいて行った。 H27年度は、Be-10に関して3つの生成断面積(ターゲット:Co, Ni, Cu)のデータを得た。昨年度得た、種々のターゲットにおける120 GeVの陽子によるBe-10の生成断面積や他の文献値などからは、入射エネルギーが数GeV以上の場合、標的核の質量数が増すにつれて生成断面積も増加する傾向が見られたが、H27年度に新たに得たBe-10に関する3つの生成断面積の結果も、上記の傾向に相反しないことが分かった。昨年度得たAl-26の生成断面積の結果と併せて、求められた軽核の生成断面積には、原子核の核子あたりの結合エネルギーや標的核の原子核半径が関連していることが示唆された。 加速器ターゲット室内で生成される放射性エアロゾルには、Be-7, Na-22, Na-24などの軽核を含むものが多いことが知られており、今回、生成断面積を測定したBe-10, Al-26を含む放射性エアロゾルも多く生成していることが期待される。昨年度、今年度に得られた軽核の生成断面積データは、加速器ターゲット室内の放射性エアロゾルの種類、量、粒径等に密接に関係することが考えられるため、遮蔽分野及び内部被ばくの観点から、重要な知見になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の観点から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断する。 前年度に引き続き、放射性エアロゾルのサンプリング・分析のため120 GeVの陽子ビームを照射した純金属のターゲット中に生成した軽核:Be-10, Al-26の生成断面積の測定を行い、これまでに報告値の無かった、3つの核データを新たに得ることが出来た。これらのデータは、加速器ターゲット室内の放射性エアロゾルの種類、量、粒径及びその成長速度に関する情報に、密接に関連することから、遮蔽分野及び内部被ばくの観点において、重要な知見になると考えられる。また上記の生成断面積は、核データ分野においても興味深いデータである。尚、昨年度得られたBe-10, Al-26の生成断面積のデータのうち、CuとYターゲットにおける120 GeVの陽子によるBe-10, Al-26の生成断面積について、Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B 361 (2015) 685-688に公表した。
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