磁性体は広く応用されているが、磁性体内部の磁区構造研究は産学問わず重要な課題である。しかしながら従来の手法はいずれも磁性体表面近傍の磁区の観察のみで、磁性体内部の磁区を直接観測する手法は皆無であった。これに対し、偏極中性子を用いた中性子磁気イメージング法は、磁性体内部の磁区を直接観測できる手法として注目を浴びている。本研究では申請者がこれまで開発してきた中性子スピン位相コントラスト法に、多層膜分波ミラーを導入することで空間分解能を向上させ、電磁鋼板の磁区の観察を行うことを目的とした。 平成26年度は電磁鋼板内部の磁区構造測定を行う計画であった。しかしながら、前年度JRR-3とJ-PARC共に停止していたため、前年度予定していた開発(中性子スピン位相コントラスト法に多層膜分波ミラーを導入する)が実施できておらず、26年度に開発から行う予定であった。26年度も、実験の第一候補であるJRR-3が稼働せず、第二候補であったJ-PARCでのマシンタイム確保を目指したが、開発を行うための十分なマシンタイムが確保できなかった。そこで、多層膜分波ミラー導入前の従来の中性子磁気イメージング法により、電磁鋼板磁区可視化実験を行った。26年度に整備した試料環境コイルを用いて、試料に印加される磁場を変化させつつ磁区の可視化を行った結果、数ミリオーダーの比較的大きな磁区ではあるが、磁場環境に依存した磁区の移動の様子を可視化することに成功した。
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