研究課題/領域番号 |
25790087
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
関根 由莉奈 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究員 (00636912)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | コントラスト変調小角中性子散乱法 / ゲル / 微粒子 / 微細構造 |
研究実績の概要 |
多糖であるプルランに疎水性基であるコレステロールを修飾した化合物(コレステロール修飾プルラン, CHP)は水中で自己組織的にナノサイズのゲル微粒子(ナノゲル)を形成する。ナノゲルはドラッグデリバリーキャリア等として広く応用展開されているが、今まで内部微細構造はほとんど明らかになっていなかった。今年度は、昨年度までに得たCHPナノゲルの中性子小角散乱プロファイルの解析を進め、CHPナノゲルは直径約20 nmのプルランの骨格と約2個のコレステロール会合体が形成する架橋点からなることを明らかにした。さらに、コントラスト変調中性子小角散乱法(CV-SANS)を用いて様々な組成から成るナノゲルの構造評価を行った。プルランに対してコレステロールの修飾率が異なるナノゲルのCV-SANS測定を行い、中性子小角散乱プロファイルの解析によりコレステロールの修飾率の増加に伴いナノゲルの粒径が小さくなることを明らかにした。また、疎水性基の種類が異なる2種類(疎水性基:コレステロールまたはドデカン)のナノゲルについてCV-SANS測定を行い、疎水性基がドデカンの場合、コレステロールに比べて粒径の大きいナノゲルが形成することを明らかにした。以上のように、化合物の組成変化に伴うナノオーダーの微細構造変化を評価することに成功した。ナノゲルのタンパク質等の包摂能はナノゲルの組成により異なることが知られており、本研究結果はナノゲルの機能解明や材料開発に繋がる重要な知見である。今まで得られた散乱プロファイルの解析をさらに進め、ナノサイズの微粒子における構造と物性の関係を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに確立したナノサイズのゲル微粒子(ナノゲル)の構造評価手法を利用して、様々な組成から成るナノゲルの微細構造評価を行った。結果、組成変化に伴うナノオーダーの構造変化を明らかにしてナノゲルの機能解明や材料開発に繋がる重要な知見を得た。これらは当初の計画通りであり、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今までに得られたデータの解析を進めて様々なナノゲルのより詳しい内部微細構造の評価を進めていくと共に、タンパク質や無機微粒子とナノゲルの複合体についても測定を試みることを計画している。ナノゲルは、体内へのタンパク質や蛍光微粒子のデリバリーキャリアとして用いられていることから、タンパク質や蛍光微粒子との複合化過程や様々な温度での構造変化を調べることにより、ナノゲルの機能性に直結した有用な知見が得られると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗状況により、予定していた試薬の購入を翌年度に実施することにしたため、予定の支出額と差異が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
試料合成に用いる試薬を購入する。また、研究成果を発表する学会に参加するための旅費に用いる。
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