研究課題
ごく少量のコレステロールを修飾したプルラン(コレステロール修飾プルラン, CHP)が水中で形成するナノゲルの微細構造を評価することを目的として、コントラスト変調中性子小角散乱法(CV-SANS)を用いて解析を行った。ナノゲルが分散する溶媒の重水と軽水の比率を変え、散乱コントラストが異なる5種類の試料について散乱プロファイルを得た。これらのプロファイルを解析することにより、ナノゲル中でプルランとコレステロール、及びプルランとコレステロールの相関を求めた。結果、CHPナノゲルは直径約20 nmのプルラン鎖の骨格と約3個のコレステロール会合体が形成する架橋点からなることを明らかにした。また、これらの架橋点はフラクタル次元2.6でナノゲル中に不均一に分布し、架橋点間の距離は半径約2 nmの広がりを持つことを明らかにした。さらに、多糖の種類が異なるグルカンデンドリマー(GD)に着目し、同様の手法を用いて構造解析を進めた。GDは高度分岐構造をグリコーゲン様多糖であり、球形の粒子である。先ず、濃度の異なるGD水溶液の中性子小角散乱プロファイルを測定し、慣性半径を評価することに成功した。また、高濃度溶液においてもGDはその形状を保っていることを明らかにした。コレステロール修飾GDについてCV-SANSによる評価を行い、架橋点における疎水性基の会合数がCHPと比べて極めて少ないことを明らかにした。以上のように、CV-SANSによる多成分系のナノ微粒子の内部構造評価方法を確立し、組成の異なるナノゲルについて微細構造を評価することに成功した。今後は、ナノゲルの構造と物性の関係性に関する知見を更に深め、構造物性を基にした設計による材料の高機能化に繋げる予定である。
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JPS Conference Proceedings
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