研究課題/領域番号 |
25790090
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
片桐 健 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 研究員 (90510868)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | RIビーム / イオン源 / 重粒子線がん治療 / 真空 |
研究概要 |
重粒子線治療におけるPET装置を用いた照射野のリアルタイムイメージング技術の実現のために,陽電子放出核である10/11C核種を一次ビームとして治療室へ供給する方法を検討している.この方法ではイオン源にて10/11Cイオンを生成し,後段のシンクロトロン等の加速器によって治療に必要なエネルギーまでそれらのイオンを加速する.この方法を実現する為には,高純度の10/11CH4分子を1e13個程度生成しなければならない.本研究の目的は,そのガスの生成を行う10/11CH4分子生成/濃縮装置を開発する事である. この装置には,クライオクーラーによって冷却された不純物トラップ,及びメイントラップが真空チェンバー内に備わる.これらのトラップにより,蒸気圧の温度依存性が分子種ごとに異なることを利用して,メタン分子と不純物分子の分離を行う.不純物トラップの温度は100 K程度に冷却され,比較的蒸気圧の高い分子(CO2,H2O等)がその表面に凝縮する.一方でメイントラップは40 K程度にまで冷却され,比較的蒸気圧の高い窒素分子やメタン分子が凝縮する.このメイントラップにはヒーターが備わり,それにより温度調整を行うことで,メタン分子,或は不純物を気化させて選択的に取り出す事ができる. 25年度は,この装置の設計・製作を行った.また,制作した装置を用いて,空気に含まれる分子を不純物分子として想定し,非放射性メタンガス(12CH4)をそれらから分離する実験を行った.この実験により,20倍以上多い窒素分子をメタン分子から分離出来る事が確認できた.また,冷却前にはチェンバー内に多数存在したCO2,H2O分子についても,分離過程の間不純物トラップ上に留めることができ,メタン分子から高い効率で分離出来ることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の計画として次の3項目を挙げた: (i) 装置の製作/構築,(ii)ビーム照射は行わずにビーム照射により発生するガスを模擬した非放射性の混合ガスを使用し,12CH4 分子の濃縮•分離 実験を行うこと,(iii)CH4 分子の濃縮分離性能の向上を目指した,チェンバー内圧力-冷却トラップフィン設定温度の最適化実験を行うこと.これらの計画のうち⑴,⑵に関しては,上記のとおり順調に進めることが出来ている.(iii)に関しては,凝縮後に行う加熱プロセスにて,気化の始まる温度を詳しく調査している.この調査はメタン分子だけでなく,及び同じ温度で同程度の蒸気圧を持つ不純物分子である,窒素分子,酸素分子に関しても行っている.以上の進行度から,おおむね順調にしていると思われる.以上の実験結果と共に,再現性を調べる実験を更に行い,近日中に論文発表を行う.
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今後の研究の推進方策 |
11CH4分子の輸送の際に必要となる一価イオン生成用電子衝撃型イオン源の設計・開発を行う.このイオン源で生成した一価イオンの質量分析のために,静電型分析器の製作も行う.これらの装置と10/11CH4分子生成/濃縮装置を組み合わせ,非放射性の12CH4分子を用いてCH3+,CH4+イオンのイオン化効率を評価し,本イオン源の性能評価を行う.これらと合わせて,本装置をサイクロトロン施設へ設置する際に必要となる,新たなビーム照射ポートを整備するために,ビームトランスポートの設計を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の見積りに比べて,安価に購入出来た製品が有ったため. 一価イオン源の開発に用いる:真空ダクト,フィラメント,高圧電源,電磁石,静電分析器の製作等.
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