研究課題/領域番号 |
25790091
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
平 義隆 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究員 (60635803)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 超短パルスガンマ線 / 陽電子寿命 / PET / Yb:Lu2O3シンチレータ |
研究概要 |
本研究では、材料劣化の原因となる空孔型格子欠陥の分布を3次元イメージングする手法を世界に先駆けて開発し、さらに実環境下測定及び短時間測定、空間分解能向上を目指した小型検出器の技術開発を行う。3次元イメージングの測定手法は、材料内部へ深く浸透するガンマ線を用いて局所的に陽電子を発生させ、その陽電子の消滅位置と寿命を観測することで、構造材料の経年劣化や余寿命を非破壊測定する。2013年度は、新規シンチレータを用いた陽電子寿命の測定に成功し、3次元イメージングを短時間で達成するための具体的な計測手法について考察した。 小型検出器の開発では、新規シンチレータ材料であるYb:Lu2O3を用いた。Yb:Lu2O3は従来のBaF2シンチレータよりも有効原子番号と密度が共に高く、薄いシンチレータでも検出効率を高くすることができる。また、可視光領域で発光することも大きな特徴である。一辺の大きさが約30 mmの光電子増倍管を用いてシンチレーション光を検出し、陽電子の寿命を測定することに成功した。 3次元イメージングの空間分解能を高く、また、短時間で達成するために、ポジトロン断層法(PET)の3次元イメージング手法に陽電子の寿命情報を付加して計測する手法を考案した。陽電子の寿命を測定するためには、陽電子が発生してから消滅するまでの時間分布を測定する必要がある。従来のPETではその測定は困難であったが、本手法では電子加速器を用いて超短パルスガンマ線を発生するため、陽電子の発生時間を容易に制御することができる。測定材料を取り囲むように小型の検出器をアレイ配置し、2本の消滅ガンマ線を同時計測することで陽電子の消滅位置を特定し、消滅ガンマ線が検出器に入射する時間分布も測定することで陽電子の寿命分布を測定する。3次元イメージングの空間分解能や測定時間を算出するため、シミュレーションコードを用いたモンテカルロ計算を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では小型検出器の開発を目標にしており、Yb:Lu2O3シンチレータと小型の光電子増倍管を用いて従来の検出器よりも1/20の大きさの検出器を製作することができた。計測システムの評価として、陽電子寿命が既知である安定化ジルコニア(YSZ)の寿命測定を行った。産総研Sバンド小型リニアックから発生するパルス幅3 ps (rms)、最大エネルギー30 MeVの超短パルスガンマ線をYSZに照射し、YSZ内で発生する陽電子が消滅するときに放出される消滅ガンマ線を開発した検出器で測定した。超短パルスガンマ線に同期した信号に対する消滅ガンマ線の検出時間分布を測定し、YSZの陽電子寿命の測定値が誤差の範囲内で理論値の182 psに一致することを確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
2014年度は、材料の欠陥分布の3次元イメージングを達成する。最初に、測定サンプルを3軸ステージに載せ、ビーム径を細く絞った超短パルスガンマ線をサンプルに照射する。次に、サンプルと検出器の間にコリメーターを設置して特定の範囲の消滅ガンマ線を測定できる状態にする。最後にサンプルを走査しながら陽電子寿命を測定することによって、欠陥分布の3次元イメージを測定する。まずはYSZの測定を行い、寿命分布が均一に測定されるのか調べる。次に実材料の欠陥分布の測定を行う。 また、シミュレーションコードEGS5を用いて、検出器をアレイ配置した場合の測定時間や得られる空間分解能を評価する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
繰り越し可能な基金であり、2014年度に合算して使用するため。 物品費に使用する。
|