研究課題
本研究では、材料劣化の原因となる空孔型格子欠陥の分布を3次元イメージングする手法を世界に先駆けて開発し、さらに実環境下測定及び短時間測定、空間分解能向上を目指した小型検出器の技術開発を行う。3次元イメージングの測定手法は、材料内部へ深く浸透するガンマ線を用いて局所的に陽電子を発生させ、その陽電子の消滅位置と寿命を観測することで達成する。平成25年度は、有効原子番号と密度が共に高いYb:Lu2O3シンチレータと一辺の大きさが約30 mmの光電子増倍管を用いた小型検出器を開発した。この検出器を用いて安定化ジルコニアの陽電子寿命を測定することに成功した。平成26年度は、開発した小型検出器を用いて理論的な寿命値の異なる単結晶金属(銅、鉛、タンタル)の寿命測定を行った。1対の検出器を用いて3次元イメージングを行うためには、コリメータを用いて入射ガンマ線のビーム径を絞り、消滅ガンマ線の消滅位置を特定するためにアパーチャーを設置しサンプルを移動しながら寿命値を測定する必要がある。コリメータの直径を2mm、アパーチャーの直径を5mmとして測定した場合、陽電子寿命の評価に最低限必要な5000カウントを測定するのに要した時間は鉛の場合で48分であった。材料による寿命の測定値は変化することが測定されたが、誤差の範囲を超えて寿命値が異なることを測定することはできなかった。これは、測定システムの時間分解能が大きく、統計誤差が大きいことが原因と考えられる。また、3次元イメージングを行うためには高い電流量をもつ電子ビームが必要であることが分かった。例えば、5mm立法の物体を1mm3の分解能で1時間以内に測定するためには、現在の6200倍の電流量である78マイクロアンペアの線形加速器が必要であることが分かった。現在は検出器を1対使用しているが検出器の数を増やすことも測定時間短縮の有用な方法である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Journal of Instrumentation
巻: 9 ページ: C05036-1-8
10.1088/1748-0221/9/05/C05036
Proceedings of the 11th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan
巻: - ページ: 321-323