研究課題
本年度は、初年度に開発した蛍光収量型の吸収分光法と同期レーザーを用いて時間分解X線吸収分光を様々な系に適用し、短寿命の反応中間体を観測した。1. 鉄シュウ酸アンモニウム錯体水溶液について、同期レーザー照射後1ps以内の間にシュウ酸と鉄との結合が解離し、鉄イオンの価数が3価から2価に変わる様子を時分割で観察した。2.光触媒として作用する酸化タングステンについて、可視光励起による価電子帯から伝導体への電子遷移の様子と構造の変化をフェムト-ピコ秒で追跡した。時間分解X線吸収分光法そのものの開発に加え、XFELと同期レーザーの相対的なジッターによって制限されている時間分解能を改善するため、タイミングジッター計測法の開発を行った。タイミングジッターは高強度のX線が半導体試料(GaAsウェハー)に照射された際、急激な電子温度の上昇とともに同期レーザーの透過率が低下する現象を空間デコーディングと組み合わせて観測することにより、シングルショット毎に決定することができる。計測の結果、精度15フェムト秒で2つのパルス光(XFELと同期レーザー)の時間差を決定することに成功した。この計測を時間分解X線吸収分光と組み合わせることにより、当初目標であった50フェムト秒の時間分解能は十分達成可能であることを示している。今後、発光分光法やX線散乱法を組み合わせることで、より包括的に化学反応の様子をフェムト秒の時間分解能で追跡することが可能になると期待される。
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Optics Express
巻: 22 ページ: 1105-1113
10.1364/OE.22.001105
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2014/140110/
http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2013/130924/