研究課題/領域番号 |
25790094
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
小谷 佳範 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 技師 (10596464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 軟X線顕微鏡 / ナノ集光 / 画像信号処理 / X線吸収分光 |
研究概要 |
本研究で作製する走査型軟X線顕微鏡は、強磁場下で400~1500eVの軟X線をフレネルゾーンプレートによってビーム径100nm以下に集光し、試料ステージを走査させながら全電子収量法による磁気イメージング観察を行うものである。一般に走査型顕微鏡には画像取得時間が長くなる問題点があり、集光径100 nmの軟X線ビームにより30μm角の走査を行う場合、従来のステップスキャン法では1画像あたり50分を要する。そこで、本研究では高速ピエゾスキャニングとリアルタイム双三次補間解析を利用したイメージング法の開発により、画像取得時間を従来の10分の1以下に短縮することを目的とする。これにより、高効率の放射光実験を可能とする。特に、放射光を光源とする場合、光エネルギーも変化量となるため多元スキャンに有効な要素技術となり得る。初年度はその開発ベースとなる実験装置を作製し、ピエゾステージ走査による基本的な測定プログラムの開発を行った。また、細線試料によるエッジスキャンによるゾーンプレートの集光評価とソフトウェア駆動評価を目的とした放射光実験を実施し、問題点と課題の抽出を行った。次年度には、装置および計測システムの改良を行い、目標の一つである空間分解能を達成するための光学調整を行う。走査型軟X線顕微鏡および計測システムを完成させ焼結永久磁石の磁区観察へと研究を進めていく。さらに、超伝導マグネットの導入によって強磁場下実験を実施できるよう整備を推進する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で達成目標とする高速走査軟X線磁気顕微鏡の開発には、①プローブとなる放射光軟X線、②実験装置、および、③計測システム、の整備が必須である。①の放射光軟X線については、ゾーンプレート集光に適したブランチラインがSPring-8のBL25SUに完成し、まもなく本格的な実験が可能となる見込みである。②の実験装置については、精密位置調整機構付き石定盤架台上の超高真空チャンバ内に、本研究で必要なゾーンプレートとピエゾアクチュエーターを導入後、ビームラインの光軸上に設置し、真空立ち上げや駆動試験等を実施した。③の計測システムについては、ハードウェアの開発を完了し、まず、従来方式でのラスタースキャンプログラムを開発した。また、①~③の整備と並行し、ゾーンプレートによる集光試験とソフトウェア試験を目的とした簡易装置による開発実験を実施した。この実験では、軟X線磁気顕微鏡の重要な性能である空間分解能を評価する過程で、ピエゾステージの駆動評価とスキャニングプログラムの改良を進めることができた。以上の通り、高速走査軟X線磁気顕微鏡の開発が着実に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度は、BL25SUの軟X線磁気顕微鏡にピエゾステージを組み込み、電子顕微鏡用評価試料など用いて、ゾーンプレートの設計値である100nmの空間分解能を目指した光学調整を行う。H25年度に行った集光試験の結果より、実験装置及び試料の振動が分解能に大きく影響を及ぼすことが判明したため、今後、徹底した制振対策による改良を行う。また、本研究開発で必要な走査速度評価(ノイズレベル評価)は、ビームラインの光学調整が完了した後に速やかに実施する。その後、計測プログラムに高速走査法を実装し、偏光切替と同期した短時間測定手法を確立する。試料の清浄表面を得るための試料破断機構を作製した後、焼結永久磁石の元素別磁区観察に応用する。さらに、別途整備する超伝導マグネットを実験ステーションに設置し、強磁場環境の整備に着手する。これによって、強磁場下での局所磁性研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験で必要な標準試料について仕様を再検討した結果、より高精度のパターン試料が必要であることが判明した。そのため、価格および製作期間を考慮して次年度の購入に変更した。また、データ解析用計算機は研究の進捗状況から次年度に集中して使用されることが予想されたため同様に購入時期を変更した。 スキャニング動作評価と分解能評価にはこれまで細線試料を用いてきたが、さらにエッジプロファイルが良い試料が必要となったためグリッド試料とパターン試料を準備する。また、放射光の偏光切り替えのタイミングとピエゾ駆動の同期性を確認するためにオシロスコープの整備を予定している。さらに、得られた多量のデータを解析するための計算機が必要となる。次年度に計画している放射光実験では真空装置に組み込むための真空部品類と消耗品実費負担費を計上する。また、成果の発表のため、学会参加費および旅費が必要である。
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