本課題の目標であるビーム径100 nm以下の軟X線を用いた高速磁気イメージング観察の実現に向けて、以下の試験および評価を実施し、走査型軟X線磁気顕微鏡を開発した。 空間分解能評価では走査型電子顕微鏡用グリッド試料および薄膜パターン試料を用い、ナイフエッジ法による空間分解能評価を行った。その結果、垂直方向98±2 nm の水平方向93±1 nmのビームサイズが得られ、目標とする空間分解能は達成できた。 試料ドリフト評価では周囲の環境に由来する振動によって約250 nmの不規則な試料ドリフトを確認した。そこで集光光学系と試料の配置を再検討した。集光光学系を真空チャンバーに、試料をマニピュレータ先端にそれぞれ保持する方式を見直し、共にマニピュレータに保持する機構に変更することで、試料ドリフト量を検出感度以下の数nmに抑制できた。 高精度走査が必要となる局所領域のイメージングには直流電圧方式のピエゾステージを用い、本年度の課題となっているデータ1ポイントあたりの停留時間の短縮化を試みた。試料ドリフト対策、真空度向上による試料劣化対策およびノイズ対策等によってH25年度に実施した試験測定時(200 ms/point)と比較して1/10まで短縮化が進んだ。1 ms/point以下に向けて継続して開発を進めている。不等間隔データに対する補間処理のソフトウェアは作成済みであり、エネルギー変化、磁場変化あるいは温度変化といった三次元測定のニーズに応じて実装する予定である。 別途整備された8テスラ超伝導マグネットによる強磁場中でのピエゾ走査試験を経て、焼結永久磁石の元素別磁区観察を行った。熱消磁状態の迷路状磁区構造から磁場印加によって単磁区構造に移行する過程の観察に成功した。
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