研究課題/領域番号 |
25790095
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
小川 絋樹 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (00535180)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 斜入射小角X線散乱 |
研究概要 |
本研究課題では、放射光を光源とする反射型の小角散乱 (GISAXS)法において、高空間分解能の測定手法を開発することで、空間・時間的に不均一なソフトマター材料薄膜の成膜プロセスを明らかにすることを目的としている。平成25年度は、放射光GISAXSで測定可能な高精度のスピンコーターと高空間分解能のためのスリットシステムの開発を主として行った。以下、具体的な項目と主な研究成果を以下にまとめる。1. 大型放射光施設SPring-8に設置可能な専用の高精度スピンコーターを開発し、位置依存性を測定できるように、スピンコーターの回転と検出器の露光を同期するシステムを開発した。これにより、これまで試料全体の平均構造の形成過程しか測定できなかったが、X線と垂直方向において任意の位置での形成過程での測定が可能となった。2.開発したシステムを用いて、代表的な高分子ブロック共重合体(ポリスチレン-ポリ2ビニルピリジン)の形成過程の位置依存性が測定可能であることを確認した。 3. 試料表面上に拡がるフットプリントを抑えるために、回転型スリットシステムの開発を行った。駆動ステージを組み上げることで、専用のスリットシステムが構築可能であることを確認した。4. 回転型スリットシステムよりもさらなる高空間分解能を目指し、GISAXSとトモグラフィー法を組み合わせる手法を考案した。実証実験を行ったところ、100μmの局所構造の測定が可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の目的として、(1). GISAXS測定専用スリットの開発と測定システムの整備 (2). 機能性高分子自己組織化界面の時間・空間不均一形成過程の解明を設定した。平成25年度は当初の計画に従って研究を実施し、測定システムの整備と高分子ブロック共重合体薄膜界面の位置依存性の測定に成功した。現在、GISAXS測定専用のスリットシステムの開発を行っている。また、フットプリント小さくし、高空間分解能を実現するための新たな手段として、GISAXSトモグラフィー法の構築に成功した。当初の計画通りに研究を進め、期待通りに結果・知見を得ることができた。研究成果の一部は論文1報として投稿済みであり、学会においても発表済みである。現在、論文2報として投稿準備中である。以上の理由により、順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、引き続きGISAXS測定専用スリットの開発を行い、機能性高分子自己組織化界面の時間・空間不均一形成過程の解明を重点的に行う。製造プロセスなどでは、空間・時間的に不均一な材料の形成条件で取り扱うため、空間的な分布(マッピング)による測定を行い、界面形成過程と溶媒の揮発速度について、顕微的な観点から明らかにすることが必要である。平成25年度は、高分子ブロック共重合体薄膜で実証実験を行ったが、平成26年度は、有機薄膜太陽電池材料であるP3HT/PCBMブレンドを用いる予定である。また、高空間分解能測定のためのGISAXSトモグラフィー法の応用についても進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度への繰越額(74円)の発生については、平成26年1月6日に納入予定であったが、業者の納入遅延により、遅延金が生じたため、平成26年度の物品購入費に充てる。 スピンコート中での溶液の周り込みを防止するため、試料テーブルの作製を行う。また、スリットを回転するための治具などを設計し、製作する予定である。
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