研究概要 |
平成25年度は、粗視化MD法あるいDPD法など分子動力学および統計力学に立脚するモデル構築を行い、生体膜のマルチスケール・フィジックスに基づく方法論の基盤であるミクロモデルを構築する予定であった。しかしながら、将来的には、ミクロモデルと連続体スケールとの連成を行う必要があるため、今年度は、熱揺らぎに起因する分子運動を取り入れる事が可能な連成モデルの理解を文献調査を通じて深めていった(例えば、Atzberger et al., J. Comput. Phys., 224, 2007, 1255; Atzberger, J. Comput. Phys., 230, 2011, 2821)。これらの方法を拡張する事により、熱揺らぎに由来する膜面の挙動を自然に取り込む事ができると考えられる。 血球を構成する生体膜は半透膜であるため、周囲溶液の溶質濃度の局所的な変化が膜面挙動に強く影響する事が調査していくうちに分かった。そこで、今年度は上記の取り組みに加え、浸透圧による血球変形モデルの構築を行った。流れと血球変形の力学的な連成にImmersed Boundary法(Peskin, J. Compu. Phys., 10, 1972, 252)を適用するとともに、界面で不連続を持つ溶質濃度の輸送に関してもImmersed Boundary法を基に定式化を組み込んだ。これにより溶質濃度に由来する血球の膨張・収縮を周囲流体の運動と併せて解析する事が可能となった。
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