研究実績の概要 |
H26年度は,浸透圧により膨張・収縮するカプセルの数値解析手法の開発に引き続き取り組み,赤血球が溶質の濃度差由来の浸透圧によってどのように時間的に変化するか過去の実験結果と比較する事により,提案手法の妥当性の検証を行った.結果より,浸透圧による溶媒透過による血球体積の時間変化は膨張および収縮において実験結果と良く一致した事から,提案手法の妥当性を検証できた.また,せん断流場において,浸透圧による血球の膨張および収縮がその変形度合いにどの程度影響を与えるか調査した結果,血球膜上の張力の空間分布により,膜を隔てた浸透圧にも分布ができ溶質濃度も空間的に分布した状態で定常解に達する事が明らかになった.この事より,膜面でのスペクトリン層および脂質層の滑りに影響を与える事が示唆された. ミクロモデルとの連成に関しては,理論モデルと数値モデルの構築を引き続き行っており,その一端として,膜面の応力を流体場に反映させる従来型のImmersed Boundary法(Peskin, J. Comput. Phys., 25, 1977, 220)に代わって,粒子速度が与えられる際にその速度を流体場のモデルに組み込むPenalty型のImmersed Boundary法(Kim & Peskin, Phys. Fluids, 19, 2007, 053103)の実装を行い,プログラムの検証を行った.これにより,ミクロモデルで決定される膜運動に起因する速度場が与えられた際に,流体場とのカップリングを行えると考えられる.
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