研究実績の概要 |
28年度はいくつか異なるテーマに関して研究をおこなったがその1つである, モチーフ的有理ホモトピー型・非アーベルなモチーフの研究について少し背景も含めつつ説明をする. D. QuillenとD. Sullivanによって創始された有理ホモトピー論は位相空間のトーションを除くホモトピー型を記述し, 代数多様体の場合は代数構造由来の構造が備わる. 例えばJ.MorganやR.Hainの研究では, 代数多様体の場合には有理ホモトピー型にHodge構造が備わることが明らかにされている. 当該研究者は一般の代数多様体のモチーフ的ホモトピー型という不変量を構成した. 標語的に言えば, そこから, モチーフ的冪単基本群, モチーフ的高次ホモトピー群などがすべて構成できることを示した. Deligne-Goncharovによって構成されていた混合Tateな場合のモチーフ的基本群の拡張にもなっていることを示した. より標語的にいえばGrothendieckが「収穫とまいた種と」で夢想したモチーフ的ホモトピー型という概念と同じ振る舞いをするものを得た. 具体的にはモチーフ的有理ホモトピー型は, Voevodsky motivesの∞圏の可換代数対象(正確には$E_\infty$-代数対象)として定義されBetti実現関手をとると, 下部位相空間の有理ホモトピー型に対応するSullivanのDG代数があらわれる. そのBetti実現としてあらわれるSullivanのDG代数にはモチーフ的ガロア群が作用し, その作用から冪単完備化基本群(高次ホモトピー群)へのモチーフ的ガロア群の作用が定まる. これらの研究の過程では当該研究者がいままで研究していたモチーフ的ガロア群や高次淡中圏の理論が有効に応用された. さらに古典的有理ホモトピー論と代数幾何の関係に注視しながら融合を目指して研究を進めている.
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