古典極限は量子ループ代数の有限次元加群において、パラメータqを1に特殊化することで得られるループ代数の加群である。今年度は任意の型で、Kirillov-Reshetikhin加群と呼ばれる量子ループ代数の特別な単純加群に対し、そのテンソル積の古典極限がそれぞれのKirillov-Reshetikhin加群の古典極限のfusion積と同型となることを示した。この結果は、多くの研究者により予想され、いくつかの特別な場合には証明も与えられていた。しかし上に述べた一般的な設定で証明を与えることが出来たのは、非常に意義のある結果であると考えている。 またこの証明の過程で、Kirillov-Reshetikhin加群の古典極限のfusion積に関し、その定義関係式を完全に決定することが出来た。この結果は昨年度A型の場合に行った研究の任意の型への拡張であり、Kirillov-Reshetikhn加群が満たすSchur正値性と呼ばれる性質の、表現論的意味づけを与えるものであるとみなすことも出来る。またこの結果から、Kirillov-Reshetikhin加群の古典極限のfusion積が、Chari-Venkatesh加群と呼ばれる既知の加群の特別なものとなることも証明される。このようにこの結果自体、様々な研究成果と結びつくものであり、その意味で意義のある結果であると考えている。
上で述べた研究成果は既に論文としてまとめており、現在投稿中である。
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