研究概要 |
現代数論において、ゼータ関数と総称される特殊函数たちの解析接続・極・零点などの解析的性質の研究は、主要なテーマのひとつである。本研究課題の目的は、そういったゼータ関数 Z(s) たちの解析的性質を、Z(s) = X(s) + X(1-s) や Z(s) = Y (s) + Y (1-s) + B(s) といった「加法的分解」を通して調べることであった。また、ゼータ関数 Z(s) の良い解析的性質が引き出せるような補助函数 X(s), Y (s), B(s) などを特定し、それらを具体的に構成する手段を得ることも、本研究課題の目的であった。 当該年度は、研究実施計画にしたがって、ゼータ関数 Z(s) の適当な積分表示を指数多項式により近似し、そうして得られる指数多項式の族に関する加法的分解を調べることを行った。ゼータ関数が、適当な条件を満たす整函数 X(s) により Z(s) = X(s) + X(1-s) と加法的に分解されるとき、正準系と呼ばれる良い微分方程式系を関連付けることができる。しかしながら、その正準系を決定するハミルトニアンと呼ばれる量の具体的構成は、一般には非常に困難である。これを可能にするような手法の開発が、本研究課題の目的のひとつであった。そこで、当該年度は、ゼータ関数自身ではなく、その積分表示の近似から得られる指数多項式に関して、その加法的分解と関連付けられる正準系について詳しく調べることを行った。その成果として、そういった正準系のハミルトニアンを具体的に構成するための明確な手法をひとつ得ることができた。しかも、その応用として、自己相反多項式と呼ばれる多項式の根の分布という古典的な問題に対して、新たな知見を得ることができた。これらの成果はまだ出版されてはいないが、国内および海外の研究集会やセミナー等で発表した。
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