研究課題/領域番号 |
25800018
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
三井 健太郎 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70644889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 代数曲線束 / 分離商と純非分離商 / 特異ファイバー / リジッド幾何 / 正標数代数幾何 / 代数曲面 / アーベル多様体 / p進一意化 |
研究概要 |
楕円曲線束の分離商の研究結果を,一般の曲線束の場合へ一般化することが出来た.半安定還元定理が示すように,(曲線上の)任意の曲線束は半安定還元を持つ曲線束への同変な作用による商の正則モデルで得られる.固定点のある場合に,曲線束のモデルを上手く選ぶことで現れる商特異点を有理特異点のみに出来ることを示した.また逆に,有理特異点のみを持つモデルを上手く選ぶことで商を正則に出来ることを示した.これにより,有限被覆の分岐に関する理論を応用して,曲線束の不変量を計算する道が開けた.これらの商は一般に平坦ではない,そこで,小平次元や多重種数の研究を念頭に,有限ではあるが平坦ではない射についても相対的双対化層を使って分岐因子を調べ,後の研究のために準備した. 固定点のない場合は,代数的基本群の研究と関係して重要であることが例を通じて明らかになってきており,これに関しては曲線束に限らない一般次元の場合へも応用できつつある. また,曲線束を高次元化した代数多様体族についても特異ファイバーに関して研究を進めた.特に,楕円曲線束を高次元化したアーベル多様体族に関して,楕円曲線束の場合に知られている多重ファイバーの解消問題の拡張を与えた.楕円曲線束の多重ファイバーの解消問題は,ガロア・コホモロジーを使って周期と位数の問題と解釈し直すことが出来る.この問題は,ブラウワー群の分裂問題において乗法群をアーベル多様体に置き換えた問題と見做すことも出来き,この視点からラングとテートによって研究され始めた.この問題に関して,リジッド幾何によるp進一意化を用いて,アーベル多様体の退化が(一般的ではあるが)ある良い条件を満たす場合には,最良の結果を与えることが出来た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
楕円曲面についての古くから知られている研究結果や数論幾何の最新の研究成果を基に楕円曲線束の研究を進め,さらに一般の代数曲線束についても研究を進めていく中,分離商に関して予期していた結果が得られた.また,ファイバーが高次元の場合への理論の拡張を目論んでいたが,実際にアーベル多様体の場合などへ研究の道が開けてきたため.
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今後の研究の推進方策 |
有理ベクトル場と局所有限群スキームによる二種類の純非分離商を使って,曲線束の新しい不変量の計算法を開発する.当初は,小平次元と基本群が主な研究対象であったが,他に重要な不変量であるコホモロジーの計算についても並行して進める予定である.また,曲線束を高次元化した代数多様体族の場合にも可能性が開けてきたので,一般次元の場合も視野に入れて研究を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
急遽,授業の受け持ちが決まり海外での研究打合せが延期されてしまったため. 昨年度,中止された研究打合せを行う予定である.また,本年度に海外で招待講演が決まったので研究成果発表のためにも使用する予定である.
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