正標数体上の多様体のフロベニウス基底変換について研究し,得られた結果を多様体族の一般ファイバーへ応用した.最も重要な場合として,代数群のトーサーについて詳しく調べた.この場合,代数群の相対的フロベニウス写像により構造群を取り替えると,代数群のトーサーから新たな代数群のトーサーが得られる.このトーサーと元のトーサーのフロベニウス基底変換の間の関係を調べることにより,トーサー上の純非分離的な点を研究した.特に,代数群が超特殊アーベル多様体(superspecial abelian variety)である場合には,相対的フロベニウス写像の二回合成は同型の差を除き基礎体の標数倍写像と等しいので,この事実を用いてトーサーのガロアコホモロジーに於ける位数と純非分離的な点の最小次数の間の関係を明らかにした. 1変数関数体上の楕円曲線の場合には,極小正則モデルを取ることで極小楕円曲面が得られる.逆に,極小楕円曲面の一般ファイバーは楕円曲線のトーサーとして記述できる.上述の結果を,楕円曲面の研究へ応用することで,底空間の曲線を相対フロベニウスで基底変換したときに,ファイバーの重複度の変化を調べることができる.結果として,一般ファイバーが超特異な(supersingular)であり,特異ファイバーの重複度が標数で割り切れる場合にフロベニウス基底変換を繰り返すことにより,重複度が周期的に減少してゆき,最終的に重複度が標数で割り切れなくなることを示した. また,これまでの研究で,代数多様体族の基本群の計算おいて,構造射が固有でない場合にStein分解を正規化に置き換える方法を用いたが,ファイバーの連結性が崩れる問題があった.この問題を解決するために連結性が保たれる条件について研究した.
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