研究課題/領域番号 |
25800023
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
内田 幸寛 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90533258)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高さ関数 / ヤコビ多様体 / アーベル多様体 / 楕円曲線 / 超楕円曲線 / 楕円曲線暗号 |
研究概要 |
今年度は、超楕円Jacobi多様体に関する数論アルゴリズムの研究、特に、標準高さの計算について、計算速度を向上するアルゴリズムの構成を行った。また、楕円曲線暗号に関する研究も行った。 超楕円曲線のJacobi多様体上の標準高さを計算するアルゴリズムについては、種数1(楕円曲線)の場合は高速なものが知られており、種数2の場合も計算が可能であった。最近になって、種数3以上を含む一般の場合に適用可能な、Arakelov交点理論を用いる新しいアルゴリズムが、J. S. Mueller、D. Holmesによって独立に提案された。どちらのアルゴリズムも、標準高さをArakelov交点数として表し、交点数を素点ごとの局所交点数に分解して計算する。このとき、無限素点での計算はテータ関数の計算に帰着されるが、その数値計算は種数が大きいとき多大な計算時間を要する。 本研究では、無限素点での計算を、テータ関数ではなく、Riemann面上でのAbel積分の計算に置き換えることで、高速化ができるかどうか調べた。その結果、種数が大きい場合には、大幅な計算時間の改善が見られるという実験結果を得た。この内容については、論文を現在投稿中である。 また、楕円曲線暗号に関する共同研究において、elliptic divisibility sequenceと呼ばれる数列を用いて、楕円曲線上のDiffie-Hellman問題と計算量的に等価な問題を構成した。この結果はすでに論文として公表されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代数曲線とアーベル多様体に関する数論アルゴリズムの研究において、標準高さを計算するアルゴリズムは重要な役割を果たすものである。今年度、標準高さ関数の計算アルゴリズムの改良に成功したことは、本研究課題において重要な成果である。また、楕円曲線暗号に関係する、elliptic divisibility sequenceとDiffie-Hellman問題との関係も得られた。以上のことから、本研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
超楕円Jacobi多様体上の標準高さを計算するアルゴリズムの改良に成功したことで、今後の推進方策としては次のものが考えられる。まず、今回のアルゴリズムを超楕円曲線以外の代数曲線に適用できるか考察することが考えられる。また、超楕円Jacobi多様体のMordell-Weil群の生成元を求める問題について、より高い種数でも計算できるように様々なアルゴリズムの検討を行う。さらに、これらの数論アルゴリズムについて、暗号理論との関係についても考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
情報収集・研究発表のため国内外の研究集会・学会等に参加する回数が想定よりも少なかったため、特に旅費において次年度使用額が生じた。 平成26年度は、韓国において国際数学者会議が行われる。そのサテライトカンファレンスに参加予定であるので、その旅費として使用する計画である。
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