研究課題/領域番号 |
25800028
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
下元 数馬 明治大学, 理工学部, 助教 (70588780)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 代数学 / 数論への応用 / 特異点論への応用 |
研究概要 |
研究実績の概要について以下に述べる。当研究では自身の専門である代数学と周辺分野との融合を目指して研究を続けてきた。特に特異点論や数論への応用を目指しつつ、複雑な議論を整理するために時間を費やしたテーマに関して言えば、着実に研究成果を挙げつつある事を強調したい。近年、フェルマー予想の解決、佐藤・テイト予想の解決、そしてABC予想の解決など数論の分野で目覚ましい進展が見られるが、その基礎となる部分においては代数学、解析学、幾何学など全ての分野が深く関わっている。この研究では通常の複素数の代わりにp進数というある特殊な世界を扱っている。p進数の構造を深く調べ数論に応用する為には幾つかの困難が伴う。そこで数論的に由緒正しい問題の意味について調べ、代数学として自然な問題設定をすることから出発しなくてはいけない。代数学として使える手法は限られているのが現状である。これまでに開発した手法をまとめると2種類に分類することが出来る。ひとつはWitt環の手法であり、もうひとつは幾何的手法、より具体的には断面構造を調べる手法である。Witt環は古くから知られていたものであるが、その重要性にも関わらず余り組織的な研究が行われていない。また断面構造とはCTスキャンのような役目を果たすものだと考えればよい。つまり代数的な構造を調べる為に断面を丹念に調べれば元の構造が理解できるというもので数学の手法としてはとても強力である。当該年度の実績としてこれらの研究成果を論文にまとめる事が出来た。現段階において投稿・査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既に過去の研究で得られた結果と結合させることによって新たな研究成果を得ることが出来た。研究テーマの性格を考えると最初の立ち上げの為に多少の時間を費やした事は否めないものの、その後の研究の流れはかなりスムーズである。また研究内容が複数の分野にまたがっており、数論やトポロジーなど他分野からの知見が欠かせないので、その方面の専門家から意見をもらう事で正しい方向へと向かいつつある。重要であるにもかかわらず類似の研究が殆ど存在しないテーマに取り組み、数学の最も基礎となる知見を積み重ねる事を第一の目標としている。このスタイルはこれからも継続していく考えである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向としては岩澤理論と呼ばれる数論のある重要な問題に応用する事を目指したい。少し専門的に言うと、モジュラー型式の族を考えてそれに対応するガロア表現から生ずるセルマー群とL-関数との関係を主張する岩澤主予想を調べることである。また特異点の構造解析については代数幾何との関連を重視して研究を進めたい。最後に当研究において最も重要なテーマとしてホモロジカル予想、より正確には単項予想と呼ばれる40年近くの間未解決である重要な問題に焦点を絞りたい。これまでに得られた研究成果を大学のセミナーを利用して発表を行い、証明の細かな修正をしつつ確実に研究を進展させていく。これらの研究が完成すれば新しい知見が得られのは確実であり、数論への更なる応用が可能になるであろう。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初に計画していた出張予定に多少の変更が生じてしまい、結果として計画されていた使用額を完全に使い切ることが出来なかった。次年度において計画している出張等に使用する予定である。 次年度の使用計画として欧州やアジア各国で予定されている数論・可換環論関係の研究集会やシンポジウムに参加する予定であり、これらの旅程をこなせれば計画通りに研究資金の消化が可能となる。
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