研究課題/領域番号 |
25800029
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渋田 敬史 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 助教 (40648200)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 孤立特異点 / 偏微分方程式系 |
研究概要 |
特異点の不変量の計算の研究を行った。特に原点に孤立特異点持ち、係数にパラメタを含む関数のヤコビイデアルで消される代数的局所コホモロジー類全体の生成元が満たす偏微分方程式系で、階数が与えられた自然数以下であるもの全体と、それから求まる不変量を求めるアルゴリズムの研究を主に行った。当初はヤコビイデアルが0次元イデアルであることを利用して問題を有限次元の線形代数の問題に帰着し、未定係数法により偏微分方程式系を求めるアルゴリズムを実装する予定であったが、新たにマトリス双対定理を用いたアルゴリズムを考案し、その理論面の整備と実装を行った。 まず、自由加群の部分加群で、その剰余加群が長さ有限となるものに対し、その剰余加群のマトリス双対のベクトル空間としての基底から、部分加群の与えられた局所順序に関する標準基底を求める手法を与えた。代数的局所コホモロジー類を消す、階数が与えられた自然数以下の偏微分作用素全体の階数0の部分を除いたものは、ある自由加群の部分加群とみなすことができ、その剰余加群の長さは有限となる。その部分加群はある線形写像の核の共通部分として表現されるが(階数が1以下の偏微分作用素の場合はヘッセ行列の核として表すことができる)、その剰余加群のマトリス双対は、上記の線形写像のマトリス双対の像として計算をすることができるので、この部分加群の標準基底を求めることができ、これを利用して偏微分方程式系を求めることができる。 このアルゴリズムの特別な場合の実装として、半擬斉次孤立特異点を定める2変数関数から導出される代数的局所コホモロジー類の満たす、階数が2以下の偏微分方程式系を求めるアルゴリズムを、数式処理システムRisa/Asir上に実装した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していたアルゴリズムではなく、新たに考案したアルゴリズムを実装したため、アルゴリズムの理論的な正当性の証明などの準備に時間が掛かり、また、実装を進める上でパラメタの扱いでの試行錯誤があったため、実装がやや遅れている。その一方で、新たなアルゴリズムの構築という成果を上げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
新たに考案したアルゴリズムの、より一般の状況に対しても適用できる実装を目指す。同時に、すでに得られた実装を使い、孤立特異点を定める関数のクラスに対しての計算機実験んを行っていく。また、アルゴリズムの計算量の評価も行っていき、どれ程の問題に対しては適用可能なのかを見積もっていく。より大きな問題を解くとき、扱う線形空間の次元が大きくなっていき、係数膨張の影響も大きくなっていくことが予想されるので、現在の手法で計算が困難な例が現れた時には、問題を小さな問題に分割して解くなどの工夫などを行っていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
少額次年度使用額が生じましたが、合計金額としては、ほぼ計画通り使用いたしました。 当初の計画通り使用いたします。
|