研究実績の概要 |
孤立特異点を定義する係数にパラメータを含む多項式のヤコビイデアルに対応する, 代数的局所コホモロジー類が満たす偏微分方程式系の,マトリス双対を用いたアルゴリズムの実装を引き続き行行った。パラメータ空間の取り扱いをより精密にし,係数が大きくなることをなるべく抑える工夫を行った。実装したアルゴリズムを用いて,いくつかのクラスに対する実験を行い,代数的局所コホモロジー類の満たす偏微分方程式系の生成系に関する,オーダーの上限の予想をいくつか得ることができた。この予想が成り立つことの証明はまだできていないが,今後の研究で明らかにしていきたい。また,研究の副産物として,加群の標準基底と剰余加群のマトリス双対との関係を明らかにすることができたが,この理論をさらに進めることで,局所環における,様々なホモロジー代数的な不変量を計算することができるようになることが期待できる。正則局所環,より一般にCohen-Macaulay局所環上の0次元準素イデアルのHilbert-Samuel重複度と呼ばれる不変量の計算や,有限次元となるホモロージー群の次元の計算方法などの計算アルゴリズムについての研究を始めている。 また,右辺ベクトルがパラメータとなっている,整数計画問題に対する,グレブナー基底を用いたアルゴリズムの考察ととその計算量の評価を行い,その成果を発表した。また,そのアルゴリズムの理論に基づいて,整数計画問題の解の周期性の構造と,対応するアフィントーリック多様体のCohen-Macaulay性などの特異点の構造との関係を明らかにした。
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