本年度前半は,研究実施計画に掲げた5つの目標のうち,目標①「Steuding予想の解決」について名越弘文氏との共同研究が進展した.前年度に報告したように,Steuding予想自体は Y.Lee氏,L. Pankowski氏,中村隆氏らの共同研究によりすでに解決されているが,彼らの手法は私が数年前に確立した定符号正密度法を用いないものであった.私と名越氏は定符号正密度法を用いて実係数のゼータ関数についてSteuding予想が成り立つことを証明した。この結果についての論文を雑誌「Acta Mathematica Hungarica」に投稿している。
また、本年度後半は目標②「数論的ゼータ関数の零点分布から対応する多重ゼータ関数の値分布を調査する」についての研究が大きく進展した。申請者は数年前にゼータ関数ζ(s)(sは複素変数)を零点の虚部γ分だけ垂直方向に平行移動したζ(s+iγ)について,γを変動させることで任意の正則関数を一様近似できる「普遍性」が成り立つことを証明した。この結果を拡張し,1以下の正の実数δに対し,ζ(s+iδγ)についても同様の結果が成り立つことを証明した.この結果については平成28年9月にリトアニアで開催される研究集会「The 6th international conference Analytic and Probabilistic Methods in Number Theory」 において報告する予定である.
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