研究課題/領域番号 |
25800032
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山本 稔 弘前大学, 教育学部, 准教授 (40435475)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 安定折り目写像 / 3次元閉多様体 / はめ込みリフト / コボルダント |
研究実績の概要 |
本年度は3次元閉多様体から3次元空間への安定折り目写像とその4次元空間へのはめ込みリフトについて具体例を構成した.まず昨年度に構成した,3次元球面から3次元空間への安定折り目写像で,特異点集合が2つの2次元球面からなるものと,1つの2次元トーラスからなるものが,折り目コボルダントになることを具体的に示した. 次に,この2つの2次元球面を特異点集合とする安定折り目写像を,Akhmetiev氏が"pellicular"と呼んでいる形で4次元空間へのはめ込みリフトを構成した.一方,向き付け可能な3次元閉多様体から4次元空間へのはめ込みのコボルディズム群の生成元がHughes氏によって与えられている.そこで,"pellicular"はめ込みリフトがこの生成元とはめ込みコボルダントになることも具体的に示した.これにより,3次元安定ホモトピー群の生成元を安定折り目写像で構成できたことになる. また今年度は秋田大学の小林真人氏と3次元射影空間から平面への安定写像を,3次元射影空間の対称性を用いて射影空間から四面体への写像を経由することで2種類構成した.この結果は共著論文としてまとめ受理された. さらにべき乗和をべき乗の交代和で表したとき,係数にベルヌーイ数が現れることを見出した.そこでこの内容と弘前大学の田中義久氏による数学教育の観点からの考察を合わせて共著論文にし,数学教育の学会誌から出版した.べき乗和の表示で現れるベルヌーイ数は,円周からの安定Morse関数の分類と関係する.そのため,この研究と今回の研究課題との間に関係が見つかれば大変面白いと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は3次元閉多様体から平面への安定写像に関する共同研究,べき乗和とべき乗の交代和の関係など,研究課題に関連したり,研究課題との関連を探りたい問題について取り組んだ. 一方で,前年度からの課題であった向き付け不可能な3次元閉多様体から3次元空間への安定写像に関しMorse型の不等式を見出すところまでは至らなかった.また向き付け可能な3次元閉多様体から3次元空間への安定折り目写像に対して得られたMorse型の不等式に関してはプレプリントにはまとめたものの,出版には至らなかった. そのため,「やや遅れている」と評価した.
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,向き付け可能な3次元閉多様体から3次元空間への安定折り目写像を4次元空間へ"pellicular"はめ込みリフトし,はめ込みのコボルディズム類と安定折り目写像の輪郭,"pellicular"はめ込みリフトの自己交叉集合との関係を考察する. レンズ空間から3次元空間への安定折り目写像の具体的構成など,多くの例の構成に取り組む.これにより,輪郭面のはめ込みの様子と,定義域多様体のトポロジーの関係をより精密に調べ,これまでに得られたMorse型不等式に関する結果の進展を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度購入予定であったPC (Mac Mini)が次年度更新見込みという記事を見た.研究には図を描いたり,計算ソフトでグラフを表示させたりする必要がある.そこで1年待ってより高性能な機種を購入した方が良いと判断したため.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度購入を見送ったPCを購入する.何かの事情で新しいモデルが出なかった時でも,次年度が最終年度であるため現行モデルを購入することにする.秋田大の小林真人氏とは引き続き短期出張を繰り返し,共同研究を行う.また,校務の間にまとまった時間が取れれば,ロシアのAkhmetiev氏を訪問し,研究打合せを行いたいと考えている.
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