研究課題/領域番号 |
25800034
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
石渡 聡 山形大学, 理学部, 准教授 (70375393)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 熱核 / ランダム・ウォーク / 連結和 / 結晶格子 |
研究概要 |
本年度はまず、研究目的の研究1「ボトルネック構造を持つ空間上の熱核の長時間挙動」実現のため、Grigoryan教授との共同研究でブラウン運動が再帰的(parabolic)な多様体の連結和上の熱核の挙動の研究を行った。Grigoryan, Saloff-Costeは2009年の論文でブラウン運動が非再帰的な(non-parabolicな)非コンパクトリーマン多様体の連結和上の熱核の長時間挙動をhitting probabilityの詳しい挙動を調べることにより明らかにしている。しかし多様体が parabolic な場合は hitting probability の挙動が良い評価を持たないので新たなアプローチが必要であった。我々はグリーン関数の挙動を調べることによりparabolicな多様体上の連結和上の熱核の良い評価を得た。これにより非コンパクトリーマン多様体をコンパクトな連結部分で連結和をとった多様体上の熱核の挙動は適切な条件のもとでは全て明らかになったことになる。この結果は現在投論文稿準備中である。 また、研究目的の研究3「ボトルネック構造の距離空間・グラフ上への拡張」実現のため、非コンパクトリーマン多様体の離散的類似である無限グラフ上のランダム・ウォークの長時間挙動について、研究協力者の小谷教授および河備准教授と研究を行った。グラフ上のランダム・ウォークは様々な条件のもとで多くの研究者により研究されているが、abel群が作用しているグラフ(結晶格子)上の対称ランダム・ウォークの長時間挙動は近年小谷、白井、砂田らにより詳しい挙動が明らかとなっている。本研究ではボトルネック構造把握の第一歩として結晶格子上で非対称ランダム・ウォークを考え、まず、三角格子の漸近挙動に非対称性がどう関わっているのかについて明らかにした。この結果を動機として、一般の結晶格子において、その長時間の挙動である中心極限定理、さらにプロセスレベルでの弱収束について明らかにした。この結果は現在論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多様体上で open problem であった parabolic な多様体のコンパクトな部分による連結和上の熱核の精密な挙動が初年度で得られたことは、本研究における研究目的の研究1がほぼ達成したことを意味する。また、研究2「ボトルネック構造を特徴付ける幾何学的不等式の開発」達成にも近付いたといえる。また、グラフ上のランダム・ウォークの長時間挙動の研究も、離散的類似として今後多様体上の研究との相乗効果が期待できる。以上のことから、現在までの研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究目的の研究1を完成させ、論文として投稿するとともに、その結果から得られる付随的なこと、また研究2の幾何学的不等式の開発に重点を置く。また、研究3として無限グラフや距離空間上の研究を同時に進行させていく。特に最適輸送理論との関わりについてはまだ未解明な部分も多いため、関連する研究者との研究打ち合わせを行っていく。
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