研究実績の概要 |
最終年度はIPMUのT. Khandhawit氏, UCLAのJ. Lin氏と共同研究でSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を研究した. Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型は, Seiberg-Witten方程式を用いて定義される3次元多様体の不変量である. それは位相空間のU(1)-同変安定ホモトピー型として定義され, そのU(1)-同変ホモロジーを取ると, Kronheimer-Mrowkaによって構成されたSeiberg-Witten-Floerホモロジーと同型になるものである. 3次元多様体の第一Betti数が正のとき, このような不変量を構成するためには障害があることが知らている. 今年度の研究で, Seiberg-Witten-Floerホモロジーを適当な局所係数で捻ったものに対応するSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型であれば障害が現れず, 一般の3次元多様体に対して定義できることを証明した. さらに, 我々はこのSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型を用いて, 境界付きスピン4次元多様体の交差形式への応用を行った. Seiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型は, 重要で強力な不変量であるが, 扱いが難しく, この研究を始める以前はほとんど進展がなかった. 特に3次元多様体の第一Betti数が正の場合は, 構成自体が困難であった. この研究を通して, 第一Betti数が正の場合の構成は進展し, また, 研究計画を立てた時には想定していなかった応用も得ることができた. 一方, この研究のもう一つの目的であった, 3次元多様体の手術に関するSeiberg-Witten-Floer安定ホモトピー型の振る舞いに関しては, 未だ研究の途上であり, 今後の課題として残った.
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